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5.不健全魔王の朝

〈十二皿目以前 アトリエブログ掲載小話・別名アゼルのシャル一押し部位紹介〉  朝、ベッドで目が覚めるとシャルが俺に背を向け、昔着ていた体にフィットするインナーと夜着の下で、ストレッチをしているのが見えた。  俺──魔王の妃であるシャルは、大体俺より早起きだ。  いつも先に目が覚めて日課のストレッチをしている。  俺はぼんやりとそれを眺めながら、じっとある一部を注視した。  カーペットにマットを敷いて、そこで大きく足を左右に開くシャル。  片足に向かってそのまま上体を傾け、グッグッと体を解す運動だ。  その逆側でキュッと引き締まった足が、筋を伸ばされ震えている。足先が伸び、時折耐え難いように指が丸くなる。  寝ぼけ眼の俺が注視しているのは、シャルの足だ。 「……挟まりてえ」  取り敢えず、頭がまだ寝ていると言うことにしておこう。寝ているので、重ねて言うけどな。 「太ももに……キツめに挟まりてえ」  あの靭やかな筋肉を纏い引き締まった弾力のある太ももに、顔を挟まれたい。  夢のような光景を思い、俺はなんにも気が付かないで健全に健康管理をしているだけの自分の愛する人を、しばし不健全な眼差しで突き刺す朝。  そうしていると、不意にシャルは天に向かって両腕を突き出し伸びをした。  そのまま体を横に倒し、足の付け根から手首までがなだらかな丘を作る。  思わずうおおおお、と脳内で全俺が立ち上がり、食い気味に拳を握った。  本体の俺はもちろんクールかつ真面目な表情で微動だにしていない。プロだからな。  脇。脇はいいな。うん。  しかもあのインナーはエロい。胸筋と脇を繋ぐ筋が見えるし、筋肉の凹凸がよくわかる。  背中を見ている俺には今は見えないが、代わりに腰から脇、腕、手首のラインが見放題だった。 「噛み付きたい……」  そして眠った脳は欲望のまま呟く。 「脇に……噛み付きたい……」  気が付いていないのをいいことに、俺は好き勝手に不埒なことを考えていた。  ……気づいてるんだが。  自分の背後で微かな囁きが聞こえて、内心で返事をする。  いつもなら聞き取れないアゼルの小声のセリフも、物音のほとんどない静かな朝ではギリギリ俺に届くのだ。  何をどうしたのかわからないが、こちらを見つめているアゼルは先程から俺の太ももにキツく挟まれたくて、俺の脇に噛み付きたいらしい。  んん、多分寝ぼけている。  アイツは夜行性で、寝起きがそんなに良くないからな。  ──ちょっとお仕置きをしてやろう。  そう考えた実は冗談が好きな俺は、側筋を伸ばすストレッチを不意にやめてさっさと立ち上がる。  素早く振り向いて真剣な表情のまま固まっているアゼルに近づき、その首元を片足でまたいで、そのまま前転するようにベッドへ転がった。 「!? ぇ、ぐっ、!?」 「ん、おはよう。まだ寝ぼけている旦那さんは、お仕置きにふとももで挟んであげような」 「~~~~ッ!」  足首を掴んで膝を曲げると、アゼルの首は俺のふくらはぎと太ももに挟まれてしまった。  呼吸が多少苦しいのか、ゆでダコみたいに真っ赤になっている。痛くはないと思うがあんまりするとかわいそうだから、もうすこししたら離してあげよう。  背を丸めて足に挟まるアゼルの頭を抱き込み、わっしゃわっしゃ犬よろしくなでくりまわす。  こういう友達的なじゃれあいも好きだ。  楽しくて仕方ないので、自然に笑顔になった。 「あはは、これにこりたら盗み見はだめだ。堂々と見てもいいんだぞ」 「ふっ、! 、!? うぐぇっ、うううっ……!?」 「そんなに触っても離してやらない、俺の足はそんなにいいものじゃないだろう? ん?」 「さぃ、ぃぃ、こう、うぶぇぇ……ッ」 「? ふっ、あははっ、ごめん、ごめん。次は脇を噛むからな、アゼル」  手で俺の足を触るぐらいしか抵抗しないが唸っているので、それが面白い。本気で苦しくはないとわかっているからだ。  ほら、俺の足なんて女性のように柔らかくもないんだから、これにこりたらよくわからない寝ぼけ方はしないことだぞ。  アゼルは解放してからしばらく顔を両手で覆ったまま、丸くなってベッドの上で震えていた。  ちょっとやりすぎたかと反省したんだが──まさか次の日は目の前で体育座りして観察されるとは、思わなかった俺である。おおう、確かに堂々としてる。  なぜか期待のこもった目でふとももを見られていた理由は、よくわからなかった。  結

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