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第1話

    💛💛💛ラブラブ夫夫奮闘記💛💛💛  彼は、人呼んで怪傑ばななマン。  侠気(おとこぎ)にあふれた、神出鬼没のお助け人だ。超高性能のレーダがSOSをキャッチししだい、迷える仔羊の元に馳せ向かって、ひと肌脱いでくれる。  多種多様な恋の病(やまい)に応じた治療法を編み出して、甘美な世界へ羽ばたいていけるよう計らうそれが、ばななマンの使命だ。  東に(とう)が立ったネコがいれば、灰になるまでネコ道に精進せよと激励してやり。  西に初恋をこじらせた青年がいれば、未練を断ち切る愛慾三昧の一夜をお膳立てしてやり。 北に格差に怖じる片思い男子がいれば、下剋上ラブアタックの秘法を授けてやり。  南にAV界の帝王をめざす男優がいれば、触手のプールを用いて絶倫で汁だくな肉体へと改造をほどこしてやり。  さて、今日も愛の迷路をさまようカップルが助けを求める声が──。     ◇◆◇  風薫る、アオカン日和の夕暮れ時。賃貸マンションの一室で、こんな光景が繰り広げられていた。 「ごめん、翼くん、シラけさせて……」  しめ込み(ふんどし)が似合うだろう短髪の男前が、しおしおと三本線のジャージを引っぱりあげた。ぴっちぴちで宇宙一かわいいマイ・スイートが、バニーガールの衣装をまとい、そのうえ、しなだれかかってくる。  すこぶるつきに萌え萌えのシチュエーションであるにもかかわらず、イチャつきモードが最高潮に達するのと相前後して、しゅるしゅるとムスコがしぼむ。  みじめだ、情けない、俺のアンポンタン。 「ヘコまないで先生……じゃなくて誠也(せいや)さん」    と、丸まった背中を優しく撫でたのは、あどけなさの残るぽっちゃり男子だ。 「翼くん、愛している!」 「おれは、もしもクマノミに生まれ変わっても愛してる!」 「だったら、俺は世間の荒波からクマノミを守るイソギンチャクに転生してみせる!」  がっぷりと抱き合った拍子に、カチューシャ仕様のウサギの耳がふるふると揺れる。それは微笑ましい情景だが、微かに哀愁が漂う。

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