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#涙の味

ずっと、君に恋をしていた。 『恋人が、できたんだ』 だから君の幸せを壊すことなんて、できないだろう...? 『驚いたよな、相手が男なんてさ』 ずっと、君に恋をしていた。 『でも、親友のお前には言っておきたかった』 幸せを願って願って願って、願えば... 『なぁ、やっぱり気持ち悪いか...?』 この恋を諦められると思ったんだ。 『そんなこと思うはずない。...おめでとう!』 なのに...。 「死んだって、どういうこと?」 たくさんの花の中で眠る君は、とても穏やかな顔をしていた。 「本当に、死んでるの…?」 そっと頬に触れた手のひらの体温が、徐々に奪われていく。 「ねぇ、なんで、そんなに冷たいの...」 ついこの前じゃん、笑って恋人ができたって言ったのは...。 あの日の笑顔を思い出して、グッと奥歯を噛む。でも、涙は出てこなかった。 「やぁ」 背後から聞こえた声と共に、ポンと肩に手を置かれ振り返る。そこには数日前に紹介された恋人の姿があった。 「...何か?」 俺の、少し冷たい声と視線。正直、今は会いたくなかった。...好きな人の好きな人なんかに。 「...その様子じゃ、伝えられなかったみたいだね」 突然、言い放たれた言葉。 「は?」 意味がわからなかった俺は、怪訝な顔を相手に向ける。すると、そんな俺を困ったように見ては。 「"好き"って、」 「...っ!」 頭にカッと血が上る一言を言った。 この人は俺の気持ちを知っていた?知っていて、付き合っていた?俺の好きな人と...。 「君に」 「え...?」 思わず耳を疑った。だって今この人は確かに"君に"って...。 「…こんな形で、僕の口から伝えることを許してくれ」 ポツリと呟いた後、真っ直ぐ俺を見る。 「あいつはね、ずっと君が好きだったんだよ」 その一言に、心の中の何かが音を立てて崩れた。そしてすぐ、その言葉を脳が拒否する。 聞きたくない。と... 「僕たちは、恋人じゃない」 理解したくない。と... 「男だと紹介された君の反応を、試したんだ」 やめてくれ。と... 心を抉る言葉たちに顔を歪める。 だって、俺は必死に、この恋を諦めたんだ...。 突然こんなことを言ってごめんと、でも知っておいて欲しかったんだと...そう言い残して俺に背を向け去って行った。 「...なんだよ、それ...」 好きだったって、なんだよ...。 試したって、なんだよ...。 「...俺の反応見て、ホッとしたんでしょ...?」 でも、君は言わなかった。 「...臆病者め...」 ポタリ、と花の中で眠る好きな人の頬に、涙が落ちて気が付いた。 ああ、俺は受け入れてしまったんだ。 「...っ、俺も、臆病者だ...っ」 この人の死を。 「...さよならだ、」 二度と報われないこの恋を。 「ずっと、大好きだったよ…っ」 君との最初で最期のキスは、冷たい唇の感触と、涙のしょっぱい味がした。

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