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だって、手を出してこないから(六)

 太ももを持ち上げられ、柔らかい肉に是愛の指が食い込む。それについて痛みなどは決してない。しかしとにもかくにもこの体勢は、奥まった秘所がとんでもなく露わにされて、恥ずかしい以外主張できそうにない。 「や、です……っ」  咄嗟に脚を閉じて隠してしまいたかったが、いまはそこにある是愛の顔をまともに見るのも恥ずかしい。耶雉は肩から抜けかけた寝巻の袂を手繰り寄せ、逃げるように顔を覆う。  ふう、と熱い吐息を吹きかけられる。その瞬間に、孔は蠢くようにひくついた。意識せず反応する感覚に、更に恥じらいは昇り詰めるが、それでもどこかで期待をしている己がいる。 「痛かったらすぐにやめる。我慢しなくていい」  片手が伸びてきて、耶雉の指先を柔らかく組む。相も変わらずはしたない体勢だが、触れられた安堵は大きく、耶雉のこわばりがやや解かれる。 「ひっ……、なに」  後孔にぬるりとした感触が走る。これは指ではない。かといって是愛の雄でもなかった。 「あ、ぁ……っ、うそ」  唾液を絡めた舌先が、皺を打つ襞をなぞると、そのまま沈められる。 「だめ、だめ、きたな……い、です……あっ」  舌先が、うねうねと内壁を撫でていく。初めて触れ合ったときも彼の舌の感触は覚えたが、それは傷跡への愛撫であって、こんなに淫らなものではなかった。新たな刺激に瞼を閉じると、涙が伝う。 「んぅ、んん……」  唾液が絡み、秘所からは水音が絶え間なく響いている。なんだか自らが愛液を分泌しているかのような錯覚に陥り、下腹が疼く。 「……はっ、耶雉、大丈夫か?」  ぬるりと舌が外れ、様子を探ってくれる優しさに、更に涙が零れた。 「だいじょ、ぶじゃ、ないです」 「えっ?」  慌てた是愛が顔を寄せる。その拍子に、耶雉はすっきりと骨の通る鼻先を鳥の音のように啄んだ。 「僕ばっかり恥ずかしくて……苦しい……是愛さまも、脱いで」 「……それもそうだな。すまない」  是愛もまた、戯れるように額に口付けて、帯に手をかける。耶雉もそれを手伝うように寝巻に手を伸ばして、その絹をむいていく。ついでに以前は触れなかった、下帯にも指をかけた。この薄い布の向こうがどうなっているのか、耶雉は知りたくもなったし、見てみたくもなった。 「こら。それはさすがに……」 「どうして、です?」  首を傾げて問うと、是愛は困ったように眉を寄せながら、耶雉の耳元へ寄る。 「もう大変なことになっているからだ」 「大変……?」  もう一度そちらへ目をやった瞬間、ぐいと耶雉の体が褥へと押し付けられた。どういうことか理解するまでややあったが、両脚の膝裏に是愛の手の感触があった。 「あ、是愛さま……だって、まだ――」  後ろに熱いものが当たる。しかしそれはまだ当たるだけだった。下帯をしたままのその熱が、孔に触れている。そしてそれは、体を突くように前後した。 「はあ、私だって、君が欲しくてたまらないんだ……だから……っ」  挿入には至らないが、まるで同じような体勢と振動を受けて、耶雉の唇から嬌声が漏れる。堪えようとしても、それは喉を震わせて甘い声として寝所に響いた。 「あっ、んん……僕も……ほしい、です」

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