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2日目の朝ー1

 翌朝目が醒めると、おばあちゃんの長男夫婦がちょうど畑から帰ってきたところだった。 「あぁ先生、よく眠れましたか?」 「おはようございます。すいません、なんのお手伝いもしないで」 「いやぁ、お客さんはゆっくりしてて下さい。ああ、だったら孫達の事をお願いしても良いですか?うちの倅共はもう町の方に仕事に出かけたんで、日中少し遊んでやってくれるとありがたいです」  昨日居間にいた子供達は長男夫婦の孫で、息子さんはここから車で40分の所にある町の農協で、その奥さんは同じ町の郵便局で働いているのだそうだ。四世代でこの家に暮らし、畑の面倒は長男夫婦が、家事はおばあちゃんが引き受けている。  長女は近所に嫁いで、この村で暮らしている。その子供が優と美智だ。次女はアメリカに嫁ぎ、次男の設楽の父親は大学で東京に出てからそのまま東京で就職し、下町っ子の設楽の母親と職場結婚をしたのだそうだ。  と、こういう情報は昨夜の宴会で何回も何回も親戚のおじさん達から教えて貰った。だからきっと大竹の個人情報も、今日の昼には村中に伝わっているのだろう。  大竹が起きてきたのに気づいたおばあちゃんが朝ご飯だと声を掛けてきて、長男である伯父さん夫婦と、子供達と一緒に食卓を囲んだ。 「あれ?智一は?」 「あ、まだ寝てるみたいです。起こしてきましょうか」 「ああ、寝かせてとけ寝かせとけ。子供は眠たいもんだ」  もう朝の八時だというのに、大竹の頭はまだすっきりしていなかった。昨日の夜、なかなか寝付けなかったせいだろう。  昨日の夜は、まんじりともしなかった。  お互いキスだけで体が昴まってしまい、大竹は逃げるようにトイレに向かった。その後縁側でうずくまりながらうとうとしていると、いきなり肩を揺さぶられて起こされた。 「あ…設楽……?」 「夏って言ってもこの辺は明け方冷えるから、部屋戻って。おじさんが達が起きてきたとき、こんなとこで寝てたら何事かと思われるよ?」 「……すまん、俺寝てたか……?」  のっそりと起きあがると、設楽は複雑そうな顔で大竹を見下ろしていた。 「……もう何もしないよ。大丈夫だから……」 「いや……そういうつもりじゃなくて……。ちょっと落ち着こうと思っただけだったんだ……」 「うん。分かってる」  大竹を軽く抱きしめて頬に唇を寄せると、設楽は「俺もトイレ」とそそくさと体を離した。 「先生の甚平、すっげぇ目の毒。超ムラムラする」 「う……うるせぇな。夏はいつもこれだよ」 「あー、早く卒業してぇ。そしたら甚平姿の先生、毎日おいしくいただくよ?」 「なんで俺がいただかれるんだよ。良いからさっさとトイレでも何でも行ってこい」  その後、設楽はなかなかトイレから帰ってこなかった。部屋に戻った大竹は、それでも設楽が戻ってくるまでは起きているつもりだったが、いつの間にか眠っていたらしい。  気がつくと、朝の七時半だった。そんなに酒を飲んだわけでも、体力を使ったわけでもないのにこんな時間まで目が醒めないのは、大竹には珍しかった。いつもは六時には自然と目が醒めるのだが、さすがに今日は目が開かなかったらしい。  隣でコアラのように布団に絡みついて眠る設楽に頬を緩めると、大竹は朝の生理現象が変な具合に進展する前に、急いで服を着替えて布団を畳んだ。 「ん…、先生……」  設楽の可愛らしい寝言に、大竹はそっと辺りを見回して、設楽が起きてしまわないか目の前で2、3回手を振ってから、それからそっと設楽の唇にキスをした。  ……ということがあって。それで今、6人で食卓を囲んでいるという訳だが。

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