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5日目・伯父さん

 伯父さんが畑から戻ってくるまで、設楽は落ち着かない思いで居間に座っていた。伯父さんにもちゃんと謝っておかなければならない。何とか美智を黙らせたくて、これ以上つきまとわれたくなくて、血が昇って言ってはならないことを言ってしまった。  人妻と不倫してストーカー……。  そんな噂は格好のネタで、伯父さんやおばあちゃん達は表に出るだけで陰口を叩かれるかもしれない。  持ってきた宿題をやっつけながら、設楽は時計にチラチラと目をやった。大竹も仕事が入っているらしいノートPCを開いて、何やらカチャカチャと打ちながら、居間を離れる気配はない。  6時になって庭に人の気配がした。はっとして目を上げると、果たしてそれは伯父だった。 「伯父さん!」  設楽が慌てて座り直すと、大竹も一緒に居ずまいを正す。 「智一」  伯父さんが設楽に目を向ける。「ごめんなさい」と言おうとした途端、しかし伯父さんはニヤリと笑った。 「聞いたぞ、智一。お前色っぽい人妻に色々手解きしてもらったって?羨ましいなぁ」 「……は?」  色っぽい人妻に手解き?一体どこをどう変換したら、そういう話しになるのだ? 「さっき道で会った奴らが言ってたぞ。お前、年上好きだって?村中の行かず後家の連中が、目ぇギラギラさせてるから、襲われないように気をつけろよ?」 「な……なにそれっ!」  さすがの設楽も真っ赤になって、口をあんぐりと開けてしまった。 「ま、若いうちは年上の色っぽい人妻なんか目の毒だもんなぁ。ふらふら手を出しても仕方ないさ。俺だって若い頃は」 「お父さん?その話は初耳ですよ?」  伯母さんがじろりと睨むと、伯父さんは慌てたように「やべぇやべえ、やぶ蛇だ」と首を竦めた。 「さ、飯でも食べるか。そうだ先生、バーベキューはどうしました?」  道々に話を聞かされて、笑い話になるように話を繕ってくれたのだろうか。この件を冗談で済ませてくれようとする伯父さんに、ありがたくて頭が下がる。 「明日が最後の夜なんで、バーベキューは明日でどうでしょうか」 「ああそれが良い。それじゃあ先生、明日は朝一緒に釣りでもどうですか?山女魚や岩魚だけじゃなくて、鮎も釣れますよ。バーベキューと一緒に炭火で焼けば、そりゃ旨いですよ?」  楽しそうに告げる伯父さんの目が、大竹に何かを告げている。大竹もすぐにそれに気づいて、「良いですね」と返事を返した。

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