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第61話(第2章)最終話

 背中に両腕を回して、強く抱き締めた。肩甲骨に触れると、片桐の身体が震えた。どうやら此処も感じるらしい。 「三條に聞いたか?」 「園遊会の件…か。」  抱き合ったまま吐息が触れるのがくすぐったい。 「そうだ。三條邸の園遊会は大掛かりな規模らしい。ただ、俺の家族は出席するから、またお前には嫌な思いをさせてしまう」 「それは…覚悟の上だ。華子が昨晩とても楽しみだと言って居た。オレが妹のあの様に嬉しそうな様子を見たのは初めてだ。華子が喜ぶなら、是非出席させて貰う事にする」 「そうか、お前がそう言うのなら、大歓迎だ。お前の燕尾服姿が楽しみだ」 「そうなの…か?」 「ああ、制服も良いが、燕尾服がお前の顔立ちに良く似合う。だから、是非出席して欲しい。俺の両親の視線が気に入らなければ、遠くに居よう。俺が責任を持って傍に居る」 「ああ、では楽しみにしている。華子もさぞかし喜ぶだろう。晃彦の御両親の冷たい視線は気にしない」  少し悲しそうに言って、自分の指に彼の華奢だが、力強い指が絡められた。

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