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第33話

「ん、ふぅ、う……」 慣らしもせずにペニスが中へ入ってきた。 昨日の今日なので解れていないわけではないが、それでも若干痛みはある。 が、その痛みもすぐに快感へと変わった。 突かれながら、胸の突起を吸い付かれ、もう声を我慢することはできなかった。 「あはは、もう我慢止めちゃうの?加賀くん見てるよ?」 音流の言葉に、夏樹は首を横に振った。 今すぐにこの場から去ってほしい。 こんな姿、明希に見られたくない。 他人に弄ばれ、それでよがっている姿なんて、明希には見せたくなかった。 「ほら、加賀くん」 音流はベッドから降りると明希の方へ歩み寄り、明希の手を引いてあろうことか、ベッドサイドまで連れてきてしまった。 目を開ければばっちりと視線が合って、心臓を鷲掴みにされたような気がした。 「うわ、超しまる。いいねー、夏樹」 男子高生が上機嫌に言いながらピストン運動を続ける。 声を出すまいと下唇を噛み、明希がいる方とは反対側に顔を背けた。 「なっちゃん、加賀くんに見られるの恥ずかしいんだ?」 「……」 音流が楽しそうにそんなことを言い、無理矢理夏樹の顔の方向を矯正した。 腹が立ち、キッと睨むが音流に効果はないらしく、へらへらと笑ったままだ。 「加賀くん、なっちゃんって絶対キスしてくれないんだ。もしかしたら加賀くんとだったらキスしてくれるかもよ」 ね、ねっちゃん、と音流はにこにこ笑顔で言う。 こんなところでキスをするのは御免被りたいが明希とのキスを拒めるはずがない。 夏樹は相変わらず表情を変えず、音流と夏樹に交互に視線を送っている。 「ほら、なっちゃん、加賀くんに甘えなよ、いつもみたいにさ」 「……明希、」 指示を出す音流に逆らえず、夏樹は明希に声をかける。 二人の視線が再び合致した。明希の唇は美味しそうで、思わず生唾を飲み込んだ。 気付けばピストン運動を行っていた男子高生も動きを止め、二人の様子をにやにやしながら伺っている。 「ちゅーして、明希」 「……いいのか?」 夏樹が頷くと、明希は屈んで近付いて、優しく口付けをしてくれた。 触れ合うだけのキスなんてもどかしくて、夏樹は口を開き、舌を明希の口腔へ侵入させる。 周りのことなんて考えたくなかった。 今はただ、明希とのキスだけに酔いしれたい。 舌と舌を絡ませて、聞こえる水音も気にせずに、ディープなキスを行う。 キスだけで感じてしまい、明希が欲しくて堪らなくなってしまう。 ああ、ギャラリーが邪魔だ。 どこかへ消えてしまってほしい。 唇を離すと、明希が少し微笑んでいた。 こんな状況でも夏樹を見放さず、側にいてくれるなんて。 申し訳なさ、罪悪感、色々な感情が押し寄せて、胸が苦しい。 「いいなー、加賀くん。なっちゃん、なんで加賀くんはオッケーなんだよー」 「明希は、幼馴染だから」 音流がブーブー文句を言っているが、恋人同士であることをバラすともっと面白がられるだろうから伏せておいた。 音流はため息をつきながらも夏樹を見て、にやり、と笑みを浮かべた。 「美味しかった?加賀くんの唇」 「……うん」 「オレとキスしない?」 「無理」 「えー」 音流は明希をじっと見ている。 上から下までじろじろと観察し、はあ、と一つ溜息をついた。 「夏樹って、こういうマジメなイケメン系が好みってこと?」 「好みとか、そういうつもりじゃ……」 好きな人のタイプなんて考えたことがない。 気が付けば、好きになったのが明希だった、ただそれだけのことだから。 夏樹は周りを見て、最後に明希を見た。 やはり、明希にはこの場から去ってもらいたい。 これ以上の失態を見せたくはない。

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