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第32話

真っ直ぐに寝室へ向かい、ベッドに腰かける。 夏樹のあとに音流、男子高生二人、そして明希が続いた。 明希はキョロキョロと周りを見渡している。 何故寝室なのだろう、とか疑問を抱いているに違いない。 「なっちゃん、脱がないの?」 「脱ぐ?」 その言葉に反応したのは明希だった。 明希の質問に、そりゃね、と音流はにっこり笑った。 「制服汚れたら困るじゃん?」 「音流、お前転校生くんに何するか言ってないのか?」 男子生徒の問いかけに、音流は「うん」と楽しそうに頷く。 そして音流は夏樹を見て、にやり、と口角を歪めた。 「なっちゃん、教えてあげれば?」 本当に意地が悪いと思った。 それを夏樹の口から言わせるなんて、どういうつもりなのだろう。 まるで夏樹が望んで行為を行っているかのようではないか。 「……」 ちらり、と明希を見た。 明希はまっすぐにこちらを見ている。 どうにもこの場から逃げ出せそうにもない。 願わくば、明希が帰ってくれますように、その思いでいっぱいだった。 「明希、できればお前には見られたくない」 見ていられなくて、夏樹は視線を逸らす。 明希を直視できなかった。 「オレは今から、こいつらに抱かれる」 「……は?」 ちらり、と明希を見る。 いつも無表情の明希も、今この瞬間は流石に驚きを隠せないような表情を見せた。 明希は音流たちを見て、それからもう一度夏樹を見る。 「セックスするって言ってんの」 だから、と夏樹は俯いて言葉を紡いだ。 「出来ることなら、すぐにこの場から消えてほしい」 「……」 幻滅されたに違いない。 呆れられたに違いない。 明希がいない間、明希以外の人間と関係を持って、何回もセックスをしているのがとうとう知られてしまった。 嫌われたって仕方がないと思った。 最低なことをしているという自覚は夏樹にはある。 脅されているとはいえ、そもそもの始まりはハッテン場でひっかけた男とホテルに行ったことだった。 その時点で夏樹は明希を裏切っている。 当時、いくら心が荒んでいたとはいえ、だ。 「加賀クン、帰らないよね?」 音流はにっこり笑顔で明希に尋ねる。 明希は無情にも、その言葉を肯定した。 明希なら帰ってくれると思ったのに、この場にとどまるという選択をされてしまった。 「ほら、なっちゃん。制服汚れてもいいの?」 「……」 夏樹は仕方なく制服を脱ぎ始めた。 ブレザー、カッターシャツ、と順に脱ぎ、床に落とす。 いつもは何てことないのに今日だけは恥ずかしさで一杯だった。 ベルトを緩め、ズボンを脱ぎ、下着を脱ぐと夏樹は音流をキッと睨んだ。 「好きにしろよ」 「ふふふ。じゃ早速」 音流はネクタイを外すとベッドに上がり、夏樹を押し倒した。 首筋に吸い付き、そのまま耳たぶを食む。 思わず反応すると、音流は楽しそうに笑みを浮かべた。 「今日は感度いいね。そんなに加賀くんに見られるの嫌だった?」 「……お前っ!」 「嫌がるなっちゃん、最高に可愛いよ」 本当に趣味が悪い。他の二人も近付いてきて、夏樹の体を弄び始めた。 明希だけは部屋の隅から動かずに、じっとこちらを観察している。 「あっ、」 ペニスを吸い付かれ、声を上げた。 今日はいつもより感度が高い。 声を出すまいと必死に我慢していても、どうしても小さく漏れ出てしまう。 全身を蹂躙され、堪らず声を漏らしながらも夏樹の意識は明希の方にあった。 無言の状態が逆に怖い。 一体何を思っているのだろう、それを知るのが怖かった。

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