2 / 9
オメガ編2
「そろそろ番を作れと、両親が五月蝿くてね」
唐突に彼がそう言った。
「今度オメガとのマッチングパーティに出るんだ。……お前も来るかい?」
パーティには最上級のオメガたちだけでなく、優れた独身のアルファも数多く出席するという。
「もしかしたらお前の運命の番も、そこで見つかるかもしれないよ」
屈託無く笑う彼に、僕も笑顔で応える。
胸が激しく痛んだけれど、それはすぐに押し殺す。
アルファの言葉には逆らえない。
彼が喜んでくれるなら、それでいい。
だけど本当は……少しだけ、疲れてしまった。
自分から望んで始まった関係だけど、僕の思いが彼に届くことはない。
それが無性に悲しくて、苦しくて。
どれだけ支配されても、心が満ちることはなかったのだ。
――やっぱり僕は、出来損ないのオメガなんだ……。
ベータの家庭に生まれた、唯一のオメガ。
ヒートが来るまでずっとベータだと思っていたからなのか、僕の考えは普通のオメガと違うらしい。
学生時代、クラスメイトたちに散々「オメガらしくなれ」と言われ、僕自身頑張って努力してきたけど……やっぱり僕は、本当のオメガにはなりきれないようだ。
きっと彼も、僕が出来損ないだから、少しの愛も与えてくれないんだろう。
離れなきゃいけない。
でも離れたら僕はどうなる?
先の見えない未来を思うと、不安だけが募っていく。
マッチングパーティーに出席しても、運命の番に会えるとは思えないけど、彼の言葉には逆らえない。
「僕も出席します。パーティーで、あなたの運命の番が見つかるといいですね」
激しくざわめき、泣き叫ぶ心を無理やり押さえ込んで、僕は笑顔を作る。
「あぁ」
彼は笑って、そう答えた。
ともだちにシェアしよう!