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【魔法のりんご飴】さほり

「なんでぇぇー?!」 甲高い声が、日の落ちた路上に響いた。 うちの母親曰く「深みのあるセラドングリーン」色の浴衣を着た那智(なち)が、パニックの境地で上げた悲鳴だ。 異世界に飛んだばかりのような台詞を叫ぶのも無理はない。 16年間男として育ったはずの那智はたった今、Fカップはあろうかという巨乳をその胸にぶら下げているのだ。 いや、ぶら下げている、という表現には語弊がある。那智の巨乳は浴衣の胸元を前に押し出し、その豊かさと張りを主張している。当然ブラジャーなんか着けてないのに、自重で垂れるなどという怠惰さを感じさせない美乳なのだった。 「なんだよこれぇ…… なんで俺だけ…… ?」 泣きそうな声をあげる唇は赤く光っていて、さっきまで那智が食べていたりんご飴を思い出させる。 「やっぱさっきの、魔法が効いたんじゃないのか?」 そう言うと、那智は恨みがましい目で見上げてきた。 「だって前の奴らは、変な声になるだけだったじゃん!」 「全員がそうだったかどうかは、わからないだろ。オレらが見たのは、せいぜい3、4人だし」 「そぉ…… だけどさぁ…… 」 居心地悪そうに那智が身じろぎすると、胸のてっぺんにある突起が浴衣の生地を押し上げて、わずかに膨らんでいるのが見えた。 ブラジャーしてないから、ちょっと動くだけで生地に擦れて乳首勃っちゃうのかな…… 色の濃い浴衣だからピンク色こそ透けないものの、打ち合わせをはだければそこにたわわな果実があるという想像が、オレの下半身を直撃した。 「なぁ陽平、さっきの出店に戻ろう?こんな風になるなんて、聞いてねえし!」 「戻ったってもう店ねぇと思うよ?そもそも、もう畳むからって半額だったんだし」 「うええぇぇ〜〜」 那智がさっき食べたりんご飴は、「パルプンテ!魔法のりんご飴」の屋台で買ったものだ。オレと那智は夏祭りの露店街を歩いていて、「半額!半額だよ!」という客引きにつられてその怪しい飴を買った。 幼馴染の那智は口は悪いが、女子みたいな可愛い顔に似合う甘党だ。 オレたちの前に飴を食べた客たちは、ヘリウムガスを吸ったみたいな変声になり、ゲラゲラ笑い合っていた。 「魔法の」なんていったって、その程度だろう。 そう思って駅までの道を歩いていたら、飴を食い終わった那智が突然「身体が熱い」と言って立ち止まった。 自力で立っていられない様子に慌てて支えたら、那智の身体はなんだかふわっと柔らかくて。 オレのみぞおちに、ボリュームのある膨らみがぐっと押しつけられた。 道行く人たちからは、男女のカップルが路上でいちゃいちゃしているように見えただろう。那智の浴衣は男物だが、暗い道端ではよく見えない。 その膨らみの正体を目で確かめるために両肩を掴んで身体を引き離すと、オレを見上げる那智の顔の下に、例の巨乳が存在していたのである。 思わずそこをガン見したオレの目線を追って下を向いた那智は、通行人を脅かすような悲鳴をあげた。 もともと女顔で小柄な那智は、胸以外の部分は大した変化を感じさせない。でも掴んだ肩は、なんとなくふんわりしているような気がした。 「那智、あのさ」 「…… なんだよ?」 「おまえそれ、下はどうなってんの?」 オレがそう聞くと、那智は上目遣いに非難する視線をよこした。 「知らねえよ、陽平のスケベ野郎!こんなとこでまくったり触ったりできねぇだろ?!」 「いや、なんてゆうか、ついてる感触でわかんないのかなって思って…… 」 「わかるかバカ!このムッツリ!」 那智は無意識なのか、腰をもぞもぞとくねらせた。 やっぱなんか、落ち着かない感じ…… ? いつもはあるものがないから?それとも、いつもはないものがある感じがするとか…… ? 那智のは赤い唇を尖らせて、突然女体化した自分の身体を持て余したように、下駄でアスファルトの地面を蹴っている。 「那智…… 元に戻りたい?」 「当たり前だろ?こんなんじゃうちに帰れねぇし!トイレとかどぉすんだよ!」 せっかくの女体を楽しもうという気は毛頭ないらしい。 昔から可愛い可愛いと言われて育ったせいで男らしくありたいという願望の強い那智は、自分だけが女体化するという「魔法」に不満しかないようだ。 「じゃあさ…… ちょっと目ぇ閉じてろよ」 と言ったところで、おとなしく従うとも思えない幼馴染のくびれた腰を引き寄せ、オレは那智の唇に自分のそれを重ねた。 柔らかい、甘い唇。 那智が目を覚ましているときにキスをするのは初めてだ。 舌を入れたかったけど、さすがに怒られそうなのでやめておいた。 オレは唇を離すと、びっくりした顔のまま硬直している那智の胸を揉んだ。 「な…… っ!なに、なんで、何を、してんだよこの、変態…… っ!」 えーとその反応はどっちにだろう。 キスとおっぱいを別々にすればよかったな。 いやどっちも気持ちよかったです。 でも、キスだけにして反応見たかったかも。無理か。チキンだからオレ、そんで反応ひどかったら泣くかもしれん。 「魔法がとけるかなと思って。王子様のキスは王道だろ?」 しれっと言うと、那智は金魚みたいに口をパクパクさせた。 「ば…… っかじゃねぇの!自分で王子とか言うな!」 「あれ、知らないの?オレ一部女子から王子って呼ばれてるんだけど?」 「知っとるわこの喪服王子!」 「失礼だな。呉服王子だよ」 「わざとだよ!つーか離せ!人に見られてんだろ!」 腰を抱いたままのオレの腕の中で、那智が暴れる。 やっぱりなんだか身体が柔らかい。 「さすがにキスじゃ治らないか」と言ってもう一度胸を揉んだら、那智が「みぎゃあ!」って可愛い声で鳴いた。 「オレはこのままでもいいかなって思うんだけど。おっぱい好きだし」 「アホか!こんな身体で帰れるか!姉ちゃん達のおもちゃにされるに決まってんだろ!」 「んーー 、そうだなぁ。でも、キスがダメなんだから、さぁ…… 」 とっさにこれを思いついたオレは天才かもしれない。自分の悪知恵に、今ほど感謝したことはなかった。 「お湯、かぶるしかないかもな」 ***** 「治んねえじゃん、バカヤロー…… 」 濡れたおっぱいを見下ろしながら、那智が嘆いた。 ホテル代はオレが出してやると請け負って、オレたちは近場のラブホに入った。 ちゃんとカップルらしくしないと、男同士だってわかったら断られるかも、と言ったら、単純な那智は急におとなしくなって、ホンモノの女子みたいに上目遣いで恥ずかしそうに見上げてきて、正直ヤバイくらい可愛かった。 個室に入ると一直線に風呂に向かった那智は、実に男らしく浴衣を脱いだ。 那智は毎年、呉服屋のうちの宣伝のために祭りのたびに浴衣を着せられているから、帯をほどくのも手馴れたものだ。 女体化していてもためらいなく裸になる那智に、全く意識されていない虚しさを感じないでもない。 が、那智の顔の下にたわわなおっぱいが実っているビジュアルは、まさにミラクル。 一緒に風呂場に入りたかったけど、この息子の状態で浴衣を脱ぐのはさすがに無理だから、オレは那智だけを浴室に送り込んだ。 真夏に浴衣で歩き回って汗をかいていることもあり、始めはぬるめのシャワーを浴びた那智は、変化を見せない身体を見ながら少しずつ湯の温度を上げていった。 耐えられる限界の温度まで上げて、熱い湯を浴びた那智が、ラブホ特有の透けたガラスの向こうで不満顔をしている。 手招きをすると濡れた身体を拭きながら出てきて、悪態をついた。 玉になった水滴をはじくみずみずしい肌は、湯で火照ってピンクに色づいている。 こんな格好でオレの前に平気で立つとか…… ほんとバカだな、那智。 無防備にもほどがある。 オレはとっくに迷いを捨てた身体で、幼馴染をベッドに押し倒した。 「ふわ…… っ?!」 カケラも警戒していなかった那智が、驚きの声を上げる。組み敷かれた今になっても、オレを見上げる目に困惑はあれど恐怖は感じられない。 「那智…… 」 「ちょ、血迷うな!確かに今は身体女だけど、中身は俺だし!男だし!落ち着け陽平!」 可愛い那智がオレを覚醒させようとする。 違うよ、那智。女体だから血迷ったわけじゃない。 中身が那智なら、身体なんて男でも女でもいい。 ただ、こんなチャンス二度とないってわかってるから、これを逃すほどオレもバカじゃないってだけだ。 「あのさ、那智。巫女とかシャーマンとかの、条件って、知ってる?」 「はぁ…… ?」 「昔からさ、特別な力があるのは、男を知らないうちだけって、言われてたんだよね」 那智の大きな目が、もっと大きく見開かれた。 「つまり、処女じゃなくなったら、魔法はとけるってこと」 「お…… まえ、まさか…… 」 「絶対優しくするからさ。…… 試してみよ?」 ***** 狭いラブホの部屋の中に、オレが那智の乳首を舐める音が響く。 那智は知らないだろうけど、ピチャピチャいうのはもちろん、わざとやってる。 音って、やらしいよね。 恥ずかしいよね? 今の那智の身体は女の子だから、乳首が気持ちよくても何にも恥かしがることないのに、声を出さないように耐えてるところがまた、可愛くてたまらない。 生で見る那智のおっぱいは、白くてきめ細かくて、乳首はやっぱりキレイなピンク色だった。触るとふわふわのもちもちで、あり得ないくらい気持ちいい。そのうえ乳首がすごい敏感で、揉んでる指がかするだけで身体がビクビク跳ねるから、こんな最高のおっぱい、ちょっとないかもって、オレはこのまま死んでもいいって思うくらいに幸せだった。 バカだろ、あり得ねえ、そう言って慌てる那智を説得すること30分。 もともと口が立つことには自信があるんだ。那智がどんな言葉に弱いかだって、長年見てきたからよく知ってる。 あの手この手で言いくるめて、オレはとうとう、その一言を勝ち取った。 「一回、だけだからな…… 」 那智の身体はちゃんと女の子になっていて、おっぱいを触っているうちにじわじわと濡れてきた。そこを触られることの感想を聞いてみたかったけど、あんまり意地悪して、やっぱりやめると言われたらかなわない。 口で言わせなくても、不安と羞恥で震える顔を見れば、だいたいわかる。ちゃんと濡れてるから、感じてるってこともわかる。 そろそろ、いいかな…… オレは那智の脚を開かせて、その間に身体を進めた。 「えっ?あ…… っ!」 驚いた顔の那智が、ビクリと身体を痙攣させる。オレは浴衣の前をはだけ、ホテルに入る前から勃ちっぱなしだったものを解放した。 「あ…… っ、熱い…… っ!!」 自分の身体を抱くように腕を回し、身をよじって悶える那智。オレは困惑した。 ちょ、まだ挿れてないし…… っ! 那智の身体がのたうつように跳ねて、うつ伏せになる。身体中から球の汗が吹き出し、驚きで手を出せないオレの目の前で、腰のくびれや尻のボリュームが少しずつ変化していった。 痙攣が収まった那智の身体は、見慣れた堅く華奢なものに戻っていた。といっても、うつ伏せの尻の下にちらりと見える陰嚢とは、小学生以来の対面だ。 「も…… 戻ったぁ…… 」 荒い息をはきながら、肩越しに那智が振り返る。安堵したようなその笑顔が、凍りついた。 「おい、ちょっと待て!陽平!!ストップ!そこは、違…… っ!!」 「無理、今さら収まんない…… 」 「や…… っ、待…… っ!」 オレは天然の潤滑油で濡れた那智の孔に、当てがったものを押し挿れた。 「い゛…… っ!!」 亀頭頸までが、ずるんと中に、飲み込まれた。那智の孔の淵が、オレの形に広がって、今にも切れてしまいそうに張りつめている。 「ひ…… ぎぃ…… い…… 」 肩甲骨が浮き出るほど身体を強張らせて、那智が苦しげな声を絞り出す。 「ごめん…… ちょっとだけ、我慢して…… 」 「や…… っ、やだ…… 、あぅ…… んっ!」 ごめん、本当にごめん。でも、止まんない。 ゆっくり…… せめて、ゆっくり、してあげたい、けど…… 何年も、何年も、我慢していた身体は、いうことを聞かなくて。 動かす度に短い悲鳴をあげる那智の細い腰を、逃げないように引き寄せて、一方的な劣情を押しつける。 大好きな子を、虐めるみたいに、ひどい抱き方しかできなかった…… ***** 「だからごめんって。ホントに悪かったと思ってるよ。マック奢るから、許して」 「マック!?よりによってマックかよ!俺の純潔、500円!?」 「いや、じゃあ、600円のでもいいから…… 」 「そこじゃねぇーーーーっ!!」 絶叫した那智は、腰に響いたのかへなへなとベッドに沈み込んだ。 「だいたい、合意だったじゃん。おまえがいいって言ったからしたんだし」 「それは違ぇ…… 男に戻ってんのにするとかあり得ねえだろ…… 」 「男に戻ったらしないなんて約束じゃなかったろ?」 「そりゃそおだけど、さぁ…… 」 だってケツに…… まさか…… 痛えし…… マジで死ぬかと…… 信じらんねぇ…… 枕に顔を埋めたまま、那智はぶつぶつと悪態をついた。 こんなことになって。 メソメソ泣いたり殴ったり、口も聞かないような怒り方をしない那智を、オレはホントに好きだなと思った。 ふわふわの茶色い髪をなでる。 こんな奇跡、二度とないんだろうな。男の身体の那智にも、もっと触りたかったけど。 「あのりんご飴、もう買えないのかな…… 」 オレが呟くと、那智が恨みがましい目で睨んできた。 「なんだよ…… 結局、女の身体の方が良かったのかよ…… 悪かったな、もぉ、つまんねぇ身体で!」 オレが無言で見つめていると、那智は自分の失言にハッとしたように再び枕に顔を埋めた。 「んーーーー?」 覗き込もうと顔を寄せたら、那智は両手で枕の端を持ち上げて、完全に顔を隠してしまった。 日に焼けたうなじが、汗をかいている。 オレがそこに唇を押しつけると、布団の下の細い身体がビクリと跳ねた。 「全然つまらなくないよ。じゃあ今度はさ、おっぱいじゃないとこ、いっぱい揉ませて?」 首筋に唇をつけたまま、そう誘ってみたら。 「くすぐってえんだよ、バカ…… 」 案外悪くない感触の、照れてくぐもった声が返ってきた。 【了】

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