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第1話
小学生の頃、病院へ行った帰り際、母は俺に泣きながら謝ってきた。ひどく困惑した俺に向かって母は言った。
Ωに産んでしまって申し訳ない、と。
まだなにも知らなかった俺は“オメガ”という言葉を理解出来なかったが、母の涙とその言葉はずっと記憶に残っていた。
月日が経ち、学校の授業で性について学んだ時、愕然とした。母は俺をΩだと言った。まさか、男の俺が子どもを産めるというのか。
更にΩには発情期があり、薬で抑制をしなければ辺りにフェロモンを撒き散らすという。なんと生きづらい性かと思った。今まで自分が普通に生活することが出来ていた為か、あまり実感がわかない。しかし昔見た母の涙は忘れられるわけもなく記憶に残っている。最早認めざるを得なかった。
Ωに関する授業の中で1番印象的だったのが、運命の番という存在だった。
Ωはαにうなじを噛まれると番となり、自身のフェロモンはその人にしか効かなくなる。その中でも運命の番はこの世でたった1人の相手で、目と目が合うだけで必ず惹かれ合うのだという。そんな都市伝説、信じてはいないけれど。
もし、万が一にでも出会えたとしたら。
今度こそ自分は、幸せになれるのだろうか。
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