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エピローグ

最低限の荷物をしまい、スーツケースを閉じた。 俺は、この家を出て行く。 義父さんを無理やり抱いてしまって、これからも一緒にいられるはずがない。 分かってはいても、もう自分の気持ちを抑えられなかった。 だから俺は、ずっと前から決めていた。 大学を卒業したら、義父さんに告白しようと。 そして―― 結果的に後悔しか残らなくても、構わないと思っていた。 許してもらおうなんて、初めから考えてはいない。 ただもう欲しくて、苦しくて堪らなかったんだ。 リビングにスーツケースを置いた俺は、一度ゆっくりと息を吐き、義父さんの部屋に足を向ける。 欲望のままに突き上げ、何度も精を注いでいたら、義父さんは途中で意識を失ってしまった。 高校に入る前から積み重ねてきた衝動を晴らすには、まだまだ抱き足りない。 それでも俺は、治まらない自身を引き抜き、義父さんの内に吐き出した白濁を丁寧に掻き出した。 これ以上やっても、苦しさは無くならないと気付いたから。 どうやっても苦しくなるのなら、やっぱり俺は、義父さんの近くにいるべきじゃない。 けれどせめて、最後に一目だけ、顔が見たかった。 義父さんの部屋の前に立った俺は、ザワザワする胸の内を宥め、努めて静かに扉を開ける ノックはしない。 薄く開いた隙間から、そっと中を伺う。 事後処理をしてベッドに寝かせた義父さんは、やっぱりまだ目を覚ましていなかった。 安堵したような、残念なような…… 複雑な心境で部屋に入った俺は、ゆっくりとベッドに歩み寄る。 初めて会った時から、義父さんに惹(ひ)かれていた。 その時はまだ、普通に『父親』としての『好き』だったと思う。 けれど、年を負うごとに、気持ちが変化していた。 最初は戸惑ったものの、日に日に強くなっていく気持ちは止められず…… ついに歯止めが利かなくなってしまった。 嫌われただろうな…… それでもきっと、俺は義父さんを諦められない。 諦められるくらいなら、最初から無理やり抱いたりはしなかっただろう。 愛しい義父さん…… 一線を越えてしまったのだから、もう『さよなら』しなきゃいけない。 穏やかに寝ている義父さんの前髪を掻き分け、愛しい頬に手を滑らせる。 「愛してるよ、義父さん……さようなら……」 感極まった俺は、涙を呑んでうつむき、すぐさま義父さんに背中を向けた。 もう会う積もりは無い。 それなのに、急に腕を掴まれた俺は、後ろに強くグイッと引っ張られた。 「うわっ!?」 不意を突かれた俺は、抵抗する間もなくベッドに倒れ込む。 な、何が起きてるの? 気付けば俺は、義父さんの腕の中にいた。 「こんな時間に、どこへ行く積もりだ?」 義父さんの低い声が、俺の耳を擽(くすぐ)る。 けれど怒っている様子は無い。 むしろ義父さんの声は、甘く掠れていて、俺の胸を高鳴らせる。 怒られるような不安と、言い知れぬ期待に、俺の身体は金縛りのように硬直した。 抱き締められたままグルリと体勢を入れ替えられ、ベッドに押さえ付けられた俺は、恐る恐る義父さんを見上げる。 義父さんの口の端が、ニッと吊り上がった。 「あんな事をしたのに、逃がす訳ないだろ」 耳に吹き込まれる義父さんの声に、俺の身体がビクリと震える。 今の言葉は、どういう意味で――? 「義父さ――ッ!」 戸惑いのまま口を開くと、義父さんの唇に塞がれた。 隙間から、義父さんの舌が侵入してくる。 今まで、あんなに避けられていたのに―― 荒ぶる欲望のまま、無理やり抱いたのに―― 義父さんのキスは甘く、俺の脳髄を溶かしていく。 なんで? どうして、こんなキスをしてくれるの? 舌先で口内をくすぐられ、最後にチュッと淫靡な音を立てて、義父さんの唇が離れて行く。 名残惜しげに抜かれた舌が透明な糸を引き、呆気なくプツリと切れて消えた。 欲を孕(はら)んだ獣のように鋭い目で、義父さんが俺を見下ろしてくる。 「今回は、吹っ切れるきっかけになったから許すが……無理やりは駄目だ。分かったか?」 「……はい」 惚(ほう)けた頭で素直に返事を返すと、ニヤリと格好良く笑った義父さんが、もう一度蕩(とろ)けるようなキスをしてくれた。 互いに舌を擦り合わせ、掻き混ぜられた唾液が、溢れて顎に伝い落ちる。 愛していても良いの? その答えは、吐息ごと呑み込まれていく。 夢……みたいだ。 さっき無理やり抱いた義父さんが、今はこんな、深いキスをしてくれてる。 嬉しい…… 快感を煽るような激しいキスで、必死に抑えていた欲望が、下半身に集中していく。 「ッ……く……」 不意に義父さんの手が伸びて、俺の硬くなり始めたモノを、やんわりと握った。 唇を離した義父さんが、喉の奥でクックックッと笑う。 「さすが……若いだけあって、元気だな?」 いつもと違って好戦的な義父さんの顔と言葉に、俺の心臓がひときわ強く脈打った。 「……あんなものじゃ、足りないだろうな?」 俺の喉がゴクリと鳴る。 あぁ、俺は―― 義父さんには、敵わない。 妖艶に身をくねらせながら、義父さんは衣服を脱ぎ捨てた。 「ほら、おいで……手解きをしてあげよう」 義父さんが俺の前で、自らの入口をクパァと開く。

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