1 / 10

かくれんぼ①

ど、ど、ど、どうしよう。 どうしよ どうしよ どうしたらいい? 何も浮かばない自分の頭を恨めしく思いながらも、この状況にすでに僕は泣きそうだ。 大野紡(つむぐ) 16歳。 かくれんぼ中ですが、泣きそうです! ただ、そこに居ただけ。 10分前の紡は、教室でぼんやりとしていた。 昼休み。食べ終わり、窓際の席で日向ぼっこをしていた。強すぎない、柔らかい日差しが気持ちいい。 一緒に食べていた友人の関谷はトイレに行ってて不在だった。 「大野もやるだろ?」 すでに決定された問いかけに顔を上げるとクラスメイトの矢沢君がこっちを見ながら声をかけてきた。 「…何を?」 正直、矢沢君とはあまり喋ったことが無かったのでちょっと構えてしまった。 「そりゃ、昼休みにやるって言ったら あれだよ」 矢沢君は、ニヤリと器用に口の端を上げて笑った。 「かくれんぼ!」 「…え?」 「かくれんぼ!」 「…」 「かーくーれーんーぼっ!やるだろ?」 満面の笑みで言われ、思わず僕は頷いた。 「はい、決定!おい、大野やるって!」 腕を引かれ、席を立たされる。 タイミング良く戻ってきた関谷もやる事になった。 矢沢君、佐伯君、後藤君、鹿島君、関谷、僕、小沢君、花木君、田崎君、松田君がメンバーらしい。 同じクラスでも、人見知りの僕は関谷以外とあまり喋ったことが無い。 しかも、かくれんぼなんて何年ぶりなんだろうか。しかし、なぜ今?学校で? 色んな疑問が頭でグルグルしたけど、それが口から出ることなく、ジャンケンで鬼を決めて(後藤君が鬼)皆、一斉に走り出す。 「小沢!一緒に隠れよ!」 「嫌だっ!」 「あはは、佐伯 断られてやんの」 「照れ隠しだ!」 「あ、1番最初に見つかったヤツ 罰ゲームあるからねー」 賑やかに、みんな教室からいなくなる。 僕も慌てて後を追った。 …のに、廊下に出ると誰もいなかった。 やばい。このままだと、罰ゲームだ。それは絶対にどうしても嫌だ。どういうリアクションを取ればいいか分からない。みんなのシラケた雰囲気が容易く想像できて背筋が震えた。 …隠れなきゃ!

ともだちにシェアしよう!