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第29話
「…な…に?」
呆然と見るレイレスの手を取り、エィウルスは再び引き寄せたる
「あ…!」
よろめくままその胸の中に戻ったレイレスは間近にその刺青を見た。
エィウルスは、握ったレイレスの手指を、己の首にそっと添えた。レイレスは、されるままエイウルスの肌に触れる。
刺青は熱く、脈打っていた。
「エィウルス…?」
その意図が読めずに、レイレスは確かめるように銀の双眸を見上げる。
視線が絡むと、エィウルスは静かに口を開いた。
「俺を殺すならば、今触れているこの刺青ごと、俺の首を落とせ」
レイレスは突然のことに言葉を失った。
「…な…」
手を引こうとするが、握ったエィウルスの指は固く、微動だにしない。
「お前を抱くのに、理由も、断りも必要ない。だが、お前には俺を殺すぐらいの理由にはなるはずだ」
銀の双眸を今一度見れば、冷ややかに、白く輝いている。
真偽など、その目を見れば瞭然だった。
「…な…にを…」
「レイレス」
ゆっくりと、その唇に引き寄せられるのを、レイレスは見ていた。
唇が、静かに開かれる。触れるか、触れぬかの瞬間、その唇は動くのをレイレスは見た。
「…お前を」
熱い唇が、微かに触れる。
「…抱かせてくれ」
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