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第10話

―――――――――――― 翌朝、AM8時20分。朝食を終えて制服に着替え、立花、匠とともに教室へ向かうと、2学年の廊下は一部に人だかりができて、騒然としていた。 もともと朝に弱い悠は、今から匠と朝食を取りに食堂へ行くが一緒に来ないかという誘いの電話が立花からあるまで、とっぷりと夢の中にいた。 電話の音に飛び起きて、跳ねた寝癖もそのままに雑に顔を洗い、寝巻きでいるよりはましかと荷物の中からラフな部屋着を取り出して身に着ける。 ドアの外で出迎えた2人はすでに制服に着替えていて、身なりもぴしりと整っていた。 「昨日聞いてたから電話してみたんだけど、よかったね。本当に朝が弱いみたい」 半分寝ているような顔で、声が届いているのかいないのかもわからない悠に苦笑しながら、立花は言う。 寮の各部屋には23時の消灯時に鍵がかけられるので、誰かが部屋に入っていって起こしてやることは緊急時以外にできないのだ。 食べ物を腹に入れると、いくらばかりかシャッキリとした。 先に食堂を出て制服に着替え、戻ってきた立花、匠と合流して教室に向かっていたところだった。 人だかりはおそらく、学力検査の点数と順位の掲示だろうことは分かった。悠たちが近づいていくと、ざわめきはヒソヒソ声に変わる。 実に不満げな顔をした黒羽が、順意表を睨み付けるようにして掲示の前に立っていた。黒羽の様子をうかがいつつ順位表を目にした立花と匠は、驚きを隠さない。 1位 義堂 悠 296/300 1位 黒羽 雅人 296/300 3位 立花 凌 292/300 ・ ・ ・ 6位 篠宮 匠 284/300 ・ ・ ・ 「……俺、クロの名前が一番上以外にあるの、初めて見たよ」 出席番号順だから仕方ねえだろうがと毒づく黒羽だが、中等部以来トップの座を守って来た黒羽だから、やはりどこか悔しそうだった。悠がなんの準備もしていない状態で試験に臨んだことを知っているから、なおさらだ。 ピロン、と、悠のスマホが鳴る。 『ハル君、ものすごく頭良かったんだね』 打ち出された文字を見て、 「まあ、勉強だけはそれなりに、ね」 と思わず苦笑を返す悠に、いやみに聞こえなくもないからやめとけ、と黒羽。いつも冷静な黒羽の珍しい様子に、立花は笑いを隠さない。 登校してくる生徒で廊下がごった返してきたので、黒羽、立花、匠と悠の4人は、そっとその場を離れた。 自分に向けられた視線が敵意とは違うものを含むように変化していく様子を見ていて、悠はなんとなく、父の意図を察した。 学力検査のことをあえて悠に伏せていたのは、遅かれ早かれ、悠が理事長の子どもだということは明るみになるのだから、最初に実力を示して黙らせて来いという、父なりの激励だったのかもしれないと。

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