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第7話④ 悪党へお仕置きタイム※
緑の蔦が、まるで意思があるかのように男の体にくっつき絡まってゆく。
触手は縛るような動きをしながら腕を上へと持ち上げて吊るす姿にすると、男がシフォンを睨んだ。
水と違い硬さがある蔦―― 腕を締め付けられる苦痛の顔を見せまいと眉を寄せるも、痛みには勝てそうに無い。
「辛そうですね。そう言えば、良いの持ってきたんです」
そう言いながらローブのポケットから何かを取り出して、相手の顔にちらつかせる。
小さな小瓶。その中に水液が入っているのが分かる。
「お前……何を――っ!」
男が言い終わる前に無理やり口に流し込み飲み込ませた。
気管支に入り咽返る。
足元にさっきの小瓶が転がってきた中身は空――全て飲まされてしまったようだ。「何を飲ませた!」そう相手に問い詰めようとした時、体に何かが湧き上がるのを感じた。
まるで、体中から火を噴くような熱さが伝わってくる―― 一番辛いのは、下半身にくる疼きだった。
「どうかしました?」
「――っ」
話したくても集中出来ない。体を少しでも動かしたらイッてしまいそうだ。
まっすぐ立っていた足ですら内股になっているのが良い証拠。シフォンはその変化を気にも留めないで、会話を続けた。
「ただ体を締め付けられるのは、辛いでしょう」
まるでソレが合図のように動き出す触手達は上の服、下の服と、隙間からスルリと入ってくる。まだそれだけなら良かった――胸元を撫でられているうちに何かヌルッとした感覚が襲う。
最初は気のせいと思ったが、違う。服がローブと一緒に解け落ちていった。
自分も溶けるのではないかと言う恐怖で顔が青ざめる。
「おや、失礼。液を出す植物だったようですね。大丈夫です、溶かすのは布だけですから」
「ふざけやがって……ッ」
ほとんど服が溶かされてしまった。男は暴れる、まるで鎖に繋がれた猛獣のように。
そんな姿など気にも留めない触手は、そのまま好きな場所に動いてくっ付く。
最初に足、次に股へ、そして――
「ひっ……!」
露出したペニスへと絡まってゆく。だが、完全に絡まる寸前……いや、触られた直後かもしれない。白い液が溢れるのを感じた。
オーガズムに浸る暇すらなかった。さっきイッたばかりだと言うのに、また下半身に熱を感じる……自分の体に何が起こったと言うのか思い当たるとするならば――1つある。
「お、おい……さっき飲ませた……」
「夢魔の発情に似た作用がありましてね。予想外の効き目の様で」
それは、シフォンが作ったお手製薬。
人間界のをマネて調合したのを男に無理やり飲ませた。
ルゥに試したのは効くのが遅かった為、作るさいは即効なのをと思ったのだが――想像以上だった様子。
その言葉に男は、屈辱な表情を浮かべながら下半身を震わせる。だが触手が腕を持ち上げているため、かがむ事すら許されない。
「ふむ……。そんなに善 がってしまうのですか、ルゥには使えませんね」
(こいつ…!俺を実験台にッ)
触手が感度が増した肌を移動されるだけで、エロい気持ちに拍車が掛かり、乳房を触られるだけで声が漏れる。
「ほら、自分だけでなく“この子達”も楽しませてあげて下さい」
動き出す緑の触手が身体にまとわり付く、お尻から後孔へやってくる感覚が体を襲い逃げるように身体を捩る。が、押さえつけられるように足に絡みつく―― そして無残にも持ち上げられる足は、身動きが取れない。
「や、やめろ……!そこは――」
さっきまでの噛み付くような表情が変わっていく。
だが触手は容赦ない。剥き出しになった後孔に向かって入ってきた。
「いっ……ああアッ!」
痛みの声を漏らす。だが触手も入る瞬間、液体の様なものを出しながら少しずつ出し入れし始める。
「と、止めろ……!こいつら、を――!」
男は叫ぶ、だけどシフォンはそれに対して相手に伝えた。
「無理ですね。私が命令してるのでは無いので―― 貴方のと違い『意思』を持ってるんですよ」
「……な、なんだと…?」
言葉に身の毛が弥立つ恐怖を感じた。
今、身体に巻きついて後孔へ入ってくるこれは、“そうしたい”と言う自分の意思でやっているというのか。
シフォンの表情を窺ってみるも、平然と微笑んでいた――嘘じゃない、そんな気がしてしまうと絶望が彼を襲う。
そしたら、この慣らされる様に出す液は、唾液か何かだと言うのだろうか――
「うアッ……ああっ!」
腰…いや、後孔から、お腹にかけて刺激がぶつかる。
触手の先端が何かにぶつかった様で、身体に電撃が流れるような痺れを起こして反り返る。そこだけを何度も付かれると、声が止まらない……止められない。
そして、また溢れ出した白い液が零れ落ちる。それでも、動きは止まらない―― 自分の意思だけで動く触手は、イッた相手の気持ちなどは考えない。
「や、やめろ……。アァッ――ひ、ぃッ」
「貴方の良い所ですか?彼等もなかなかのモノでしょ」
「ふざけ―― くァッ」
今、全身が性感帯になっている男にとって、後孔だけでイかされるのは屈辱のなにものでもない。
ぐったりしてきた男に追い討ちの如くペニスを擦り始める。身体が跳ね返ると、また溢れ出る……気持ちまで飛んでしまいそうだ。
「う……ぐあっ、ンッ……ふっァあッ」
「イッてばかりですね。“彼”が辛そうですよ?」
まるで植物に語りかけるように言うシフォンの言葉が合図だったかのように、細い植物が動き出しペニスの先端へと移動をした。
「な…にォ……――」
顔にも覇気がない男は、新たにやって来た刺激に身体を振るわせた。先端……最初は尿道を触られていたかと思うと、奥へと刺すような痛みが走った…痛さのあまりに身体を捩ろうとするが、動けない。
「ヒッ……やめッ!?」
奥へ奥へと入って来たそれは、ある一定にくると…何かに当たった。
「――っ!」
言葉が出ない、声が口から出てこない…痺れる痛みが脳へと行き渡り身体がガクガクと痙攣を起こす。
当たった先。後孔に入っている触手の先端に値する。
同時の刺激が身体を狂わせる。きっと前と後ろで前立腺が刺激されているのだろう。
ダメだ……。このまま流されては、そう思いたくても身体が言う事を利かない。
快楽が段々と支配してゆく。
「うぐっ……アアッ……ひぎっ!」
出したい。ぐっとイッたような感覚がくる……だが、塞がれたペニスから感じるのは、そのイッたような余韻だけ――
(な、なんだ……これ……ッ)
イっているのに、イケない。
この感じは何なのであろうか、とても辛い――イッてばかりいた時より遥かに苦しい。段々と蔑んでいた表情すら崩れ、涙で顔が濡れてゆく。
緩む口に植物が近づいてくる。
「やっ……くる……なっ!!」
その叫びも空しく、口の中に入ってくるのは、とても苦い。
これは何か液でも流されているのだろうか……男は嗚咽をしながら、今度は口の中も犯されてゆく―― 舌を絡まれ歯茎を撫でられ、喉の奥へと入ってくる。
そして 刺さっていた蔓のような植物がすっと抜けるのを感じた。
(そ、そんな……まだ――!!)
身体が震えて、味わい損ねていた本当の絶頂を今、全て味わう。
「っ……ンッ…………!」
「おや…」
シフォンは、小さな溜息を漏らす。
男は絶頂を味わった瞬間、動かなくなった。
どうやら力尽きて気絶をしたのだろうか、それを確認すると指を鳴らし植物を消してしまうと崩れ落ちてその場に男は倒れた。
「思っていたより早かったですね。薬のせいなら、仕方がありませんが……」
これでシフォンの気は済んだ。自分の大切にしているモノに手を出した報いは、同じ屈辱をもって受けさせたつもりだ。
だが、許した訳ではない。それは別物――
「さて……」
シフォンは指をまわす様に動かすと、手の中に“楕円の瓶”を取り出した。
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家でのんびりとシフォンの帰りを待つルゥは、さっきの出来事を思い出して顔を青ざめる。
だけど、シフォンが助けに来てくれた嬉しさ、泣いてすがってしまった恥ずかしさ、全て感情に混ざり百面相のように表情を変えていた。
「……なぁ、あいつ何してるんだ?」
主が帰宅するまでルゥの面倒を見ると離れない相方の側にいたコウが、そう呟く。
それに対して、ノエルは言葉を返した。
「可愛いよね♪」
「おい。答えになってないぞ……」
「良いじゃん、シフォン様が心配なんだよ。きっと」
「どうせ、無事なんだろ?」
その言葉に「だろうね」と返すノエル。
マールはというと、ずっと樹海の外――下町の方でノエルと心配そうに待っていた。
コウから無事見つかった知らせを受け、会いに行きたいと二人へせがんだが、それを何とか宥めて帰らせる事にした。
誰だって好きな人の無事を聞いたら会わずには居られないだろう、マールには今度ルゥを連れて下町で会うと言う約束をして、納得してもらったのだ。
ふとそんな事を思い出したノエルは呟く。
「マールってルゥの事好きだよね」
「突然だな。まぁ、助けてもらったしな」
本当にそれだけかな……もしかしたら、気が付いてない純愛だったりして―― そんな風に思いつつも言葉にはしない。気が付かないのがマールの為、そう思うノエル。
「よし、ルゥをベットに連れてこ!」
気を取り直して、ベットに連れて行こうと動き出す。
「お、お前!シフォンに怒られても知らないぞ」
「酷いなぁ……ルゥ寝てるし、風邪引くじゃん?」
良く見るとルゥは転寝をしている。そこをノエルが抱きつきに行き…そしてそれを止めるコウ。家の中はシフォンが居ないと、いつも大騒ぎである。
++++
シフォンは帰宅する前に、いつもの場所に足を向けていた。
それは、いつものを渡す為…家にあっても仕方がないからだ。
チリン……リン…
「あーっと、今日は店を閉め―― あれ、姉さん?」
店の店主マダラが出迎える。
だが予想外と言う顔を相手に見せていた。それはそうかもしれない、ルゥが誘拐されて助けに行ったのだ、此処に来るより彼の側に居たいと考えるのが普通だろう。
だが、相手を叩きのめした後に来たとなるなら、話は別かもしれない――少しだけ考えを改めて質問する。
「閉店目際に、どうかしたんで?」
その言葉に応える様に何かがカウンターに置かれた。
それはいつもの商品を入れる瓶、中には何かが入っているのが確認できる。
「新しい商品です。猛獣ですから、頑張って手なずけてください」
相手の良い笑顔にマダラは感心する。
そして、手元にある瓶の中にいる相手を同情した。ここまで怒らせるなんて、何処のアホなのかと――
「こちらの予想ですが、もしかして……」
「ええ、丘のオトモダチです」
(あ~…やっぱりなぁ……)
マダラは、瓶を持ちあげて中をマジマジと見る、煙になっているので姿は拝見出来ない。
でも、今までにやった事が無いのを弄れるのは―― 魅力的では無いだろうか
「魔法使いを調教とか……自信ないですわ~♪」
そうさっきは、気が進まなかった。
でも、考え方を少し改めて嬉しそうにシフォンに言う。
「魔法とか使えるんですかい?」
「ただの“人間”です。貴方の得意な10代ほどには、してあります」
「あや~人間だと商品には……」
嬉しさが少し半減。だからって売れない訳じゃない。
マダラの裏店は夢魔や魔族を売っている。夢魔はエナジーを集める事が出来、魔族は体力 がある――ソレに比べて人間なんて非力なモノだ。
だからこそ、売れない可能性が否めない。魔法も何も出来ない…そんなのを売るんだとしたら、それは――
「愛玩、的な何かになりますねぇ……」
そう発言したマダラは、チラっと相手を一瞥するが、シフォンは何も言わない。
好きにして良いという合図――
「まいど♪それじゃ、楽しませてもらいますわ♪」
ひと段落は出来たであろうか、シフォンは小さな溜息をもらす。
あの瓶に入っている男は、思ったとおり、生きていた以上の苦痛を味わうに違いない。そして店の戸を押す
店の鈴が音を奏でる……シフォンが店を出て行った事を示していた。
残ったのは、店主と置かれている楕円の瓶だけ―― マダラは店のドアにカギをかけると、さっそく新しい“商品”と御対面をする事にする。瓶の蓋を開けるといつも通り、姿を現すは少年、髪はこげ茶。年齢はノエルくらい……いや、それ以上だろうか。
「姉さんってば、少年ギリギリっすか」
人並みの力ならマダラでも押さえる事が出来る、近づいてマジマジと見る。
まだ意識は戻ってない様子。顔が赤いのは、シフォンに何かされたんだろう。手と足には縛られたような後が残っている。
「あー、あの人は……どんなプレイ―― げふんッ……さて後は……」
首にはいつもの首輪がついている。
さて、倒れている相手の観察は一通り終わった。後は目を覚ますのを待つだけだ。と、思ったら丁度目覚めたご様子、少年は側にいる見慣れない男を見て固まっていた。
マダラは立ち上がらせる為、手を伸ばして歓迎の挨拶をした。
「いらっしゃ~い、彼岸花へ♪」
バシッ
差し出された手を拒んだ、そこまでは予定通り……ただ予想外なのは、相手の目に抵抗する意志の鋭さを感じた事くらいだ。
“猛獣”は伊達じゃないかもしれない…今まで来ていたモノは、牙を抜かれたやつらばかりだった。マダラは、その事にゾクっとした快感を覚え口元を緩ませる。『久々に本気が出せそうだ』そんな表情を相手へ向けて――
(良いね……楽しめそうじゃない♪)
猛獣を手なずけるのも、この商売の仕事。
マダラの楽しみが、また1つ増えたみたいだ。
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<マダラのストーリーは番外編にて>
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