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第7話③※
まるで男の言葉が合図のように、動き出した水の触手。
「ひっ………や、いヤダッ」
触手とは言ったが、感覚はヌルッとした水。
透明なソレがルゥの性器へとぐろを巻くように絡みつくと、後孔にもゆっくりと徐々に体の中を侵食していく。その触感が気持ち悪くて涙目になっていく。
「は、なせ……ゲスや…ろぅ……ッ」
辛うじて出た言葉に眉を動かす男は、指でまた合図を出す。
「不愉快なガキめ……ッ」
水の触手が口元にやってきて口が塞がれた。
「んぐっ」
口の中に水の感触が伝わってくる。性器に絡み付いているのも動き出した。
少し強めにペニスを握ってきたかと思うと亀頭と尿道に刺激すると、水のヌルッとした感覚がルゥの体に伝わり痙攣で体が痺れた。
叫びたくても叫べない――その苦しさ。
口を動かすと奥へと押すように入ってくるそれが、滴り落ちる。
その零れて来る水が胸を伝い足まで流れ落ち、下へと零れてゆく。とても気持ちが悪い…体を捩ろうとしても、それを水が許さない――
「ん!……ンンッ!」
足にも絡み付いてくる触手は、片足が持ち上げられてゆく。
縛っていた物もなくなっていた、きっとあの男が消したに違いない。
そのまま、後孔に刺激が走る――持ち上がった足のせいで摩擦が生じ体を震わせる。…そんな時、予想外の刺激がやってくる。
「!」
いや、予想外ではなかったかも知れない。
それは自分の弱点をすっかり忘れていたと言う事、水触手が尻尾の所で止まるとキュッと縛るように巻き付いてきた。
「んンンッ!!……ッ」
身体がビビッと震える。そこを弄られて力が抜ける。
抑えていた感情すら失われてゆく気がした。
勿論、その反応を逃すほどバカではない男、触手に更に動くよう命じる。
尻尾を撫で回す触手、巻きついてくるのもあり、身体が痺れるような感覚は続いた。
(……このまま、俺)
体を貪るように色々な所に巻きつく触手に恐怖を覚えて来る…手だけじゃなく足にも、足だけじゃなく陰部や後孔―― そして、触手が動くたびに身体が濡れて気持ちが悪い。
フラフラになっている彼のペニスに、巻いていた触手が姿を変えた。
「――っ」
ペニスを全体的に被いかぶる形に変化させたかと思うと上下に擦りあげ、吸い上げられるような刺激を下半身に受ける。
何だろうか、これを知ってる気がする―― まだルガーだった頃、夢魔にさせてた事。そうフェラの様な、最近はなすがままに体を弄られる事が多かった自分にとって、久々の触覚を思い出し体が……腰が動きそうになる。
(う……こんなっ)
触手が動くたびに音をたて股から零れ落ちる水は、まるで自分が漏らしたような錯覚を引き起こす、勿論尻尾の刺激も忘れない…前を擦られながら触られてしまう尻尾、動きそうな腰をガマンはするが…いつまで理性を保てるだろうか――
「――っ!」
頭が可笑しくなりそうだ。
人にされるのではなく、別のモノでされて絶頂してしまいそうな所を、アイツに見られる事が許せない。
(……嫌だ、こんなので――)
イッてしまいそうだ。ペニスの先からヌルッとした愛液が溢れてくると、触手がそれを阻むように根元を押さえつけられる。
「ンンッ!!」
ルゥは目を見開いた。
イク寸前を押さえつけられたのだから、しかも心も無い触手に何て悪趣味なんだ。腹は立つが、また新しくやってくる刺激にのせいで、その怒りに集中が出来ない。
(く、くるしい…イキ…たぃッ)
イキたいのに根元は押さえつけられたまま――そしてペニスを覆っていると思いきやそのまま、尿道に刺激が走った。
「ふっ……ぅ!」
痛い、これは何だろう。尿道の隙間を水触手が入ってくる。
頭に痺れるような痛みが襲ってきて涙が溢れてきた。本当に、本当に壊される……殺されてしまうかもしれない、その恐怖と快楽が体を襲う。
「うっ……(ひゅぅ」
もう、限界……体力のもあるが、意識の方も限界になりそうだ……。
体中水浸しになりながら、弄られる体を持ち上げられる。
見える後孔の奥に何本も入ってくる水触手が、今度は後ろを刺激し始める。1つ、2つ…3つくらいだろうか、広げるように奥へとまた入ってくる。
「――っ!」
前と後ろを同時に刺激されて……腰がもう可笑しくなりそうだ。
怖い…恐怖の中浮かぶ顔――
(………シフォ…ン……)
パシャっと水音がして、それにビクッと体を震わせる。
男がルゥへ近づいてきたようだ。
「本当に壊れちゃうぞ、お前?」
その言葉に残っている意識で否定の意思を見せる
「そう……じゃぁ――」
手をまた動かした、今度は何をすると言うのだろうか…
その動きが止まると、男はルゥに言った。
「私は退屈だから外にいる…せいぜい楽しんでくれ」
立ち去ってゆく男――だが、もうルゥの意識も残りわずか、このまま、苦しいまま、イケない絶頂を味わい続けなければならないのか、水の触手が口の中の舌を刺激し始めてきた。
それにまた体をビクつかせた。
バシャンッ
「かはっ……ゲホッ…ゴホッ」
突如、体が解放された。
体に巻きついていた水の触手は、飛び散り地面全体に散らばった…その時、残った水を口から吐くように咳き込む。後孔からも零れるように溢れていた。
膝を付くように、地面へ倒れこむルゥを支えてくれる体が見える。
「遅くなりました」
シフォンだった。
最初は誰か理解が出来なかった。だが、理解できるとしがみ付くように――
「シ、フォン……?……う、うっく…うわぁあん、シフォン!シフォン……ッ」
泣きつく姿は、年齢相応な子供のよう。
後一歩遅かったら、心が砕けていたかもしれない。
そして一頻り泣いた頃、そのままシフォンにしがみ付くような体制のまま、寝息をたて眠ってしまった。
「……」
シフォンは、毛布を魔法で取り出すとルゥの体を包む。
「やぁ、森の魔法使い。屈辱を味わったようで何よりだ」
そう後ろから話しかけてくる。
だが、相手の顔を見ずに淡々と答えた。
「悪いですが、私はルゥを迎えに来ただけです。貴方を相手する気はありません」
相手の言葉に眉間を寄せる男。
スパンッ
予告も無く男からきた攻撃、水を鞭の様に上からしシフォン目掛けて振り落とした。
だが、それを瞬時に振り向いて阻止してみせる。水は、雨のように降り落ちて来る――
ザアァァァァ……
「前にも同じ事しましたよね。単細胞ですか貴方」
「――なっ!」
「力を奪われただけじゃ物足りないですか……。それにしても、水の力だけを残したのは間違えましたね」
ルゥを一瞥しながらそう呟く。
男は一度、シフォンと戦っていた。
一方的に攻撃を仕掛けたものだったが、相手の手によって力を封じられてしまっていた。今では力を出し切る事も儘ならない。
「少し邪魔ですね、貴方」
シフォンが手を動かすと、小さな竜巻を発生させ男が浮き上がらせる。
そして洞窟の壁に叩き付けた。それは一瞬の出来事、相手に防御する暇すらも与えなかった。
「魔法使いさん、ここか?」
家に訪ねてくるように話しかけてきた声は、洞窟の外から響いて来る。
少し光差すそこから現れたのはコウだった。良いタイミング、そう言いたそうな表情でシフォンは相手の顔を確認する。
「申し訳ないですが、連れて帰ってください」
最初は驚いた表情を見せたコウ、連れて帰れと言われた相手を目で確認すると引き受ける事を承諾した。
「ま……ッ!」
その場から去ろうとするのを止めようと男はする―― だが、体が思うように動かない。
打ち付けられた痛みがまだ残っている為、ロクな動きが出来なかった。
そんな相手をシフォンは、見下ろすように見ている。
「さて、終わりにしましょう……あなたにはウンザリですから――」
本気だ。生かして返すつもりは無いようだ。
後ずさる姿は、一度体制を整える為に逃げる姿勢。だが、それをシフォンは許さない。
魔法で出した紐を相手に絡みつかせて、手足をふん縛り身動きが取れないようにする。
そして相手に近づくと何かを付ける。血の様な赤い液に見えたが、男の体の中に刻み込まれるように焼かれ、焼印を押される痛みが襲う。
「がッ……アァッ……!」
「そう言えば、私のルゥに何をしてたんでしたっけ……。確か、不思議なものを使ってましたね」
そう言いながら、指を鳴らした。
何かをすると言うのなら、此方も対抗魔法を出さなくては――
だが、男が辛うじて動く指を振っても、何も起きない。
「無駄ですよ。残りの力も“封印”しました。無理矢理だったので、もしかしたら一生使えないかもしれませんが……」
笑顔で恐ろしい事を言ってのける。適当な魔法印を練った為、解き方までは考えて無いと言う意味に違いない。魔法が使えない魔法使いなど、人間のように力が無い事を示していた。
「さて、ルゥのお礼もしなくてはなりませんね」
物体が地面から現れる。
それはまるで蔦のようでいて、タコの様にうねっていた。
「水を操るの苦手なんですよ、得意な植物で良いですよね」
爽やかな顔を覗かせる、それは相手を殺しても構わないという表れなのだろうか。
相手の顔を見た男はすくみ上った。
これから始まるのはきっと、男にとって苦痛なものになるに違いない。
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動かされると体に痙攣を起こしてしまう。
イく事ををずっと絶たれた状態だったのだ、仕方が無いかもしれない。今日の残りの時間は、寝たきりになりそうだ……。
ルゥが目を覚まし目を開けるとコウが見える。
抱き上げられている事を理解するが、恥ずかしさより疲れが意識を支配する。そんな中、気になるのは2人の事。
「コウ……ノエル、たち――」
辛うじて出た言葉に、コウは答える。
「湖だっけ?あそこでマールと居たぜ。先に返らせてるよ」
どうやら、攫われたのは自分だけだったようだ。
それを聞いて安心する。あのまま何かされ続けられていたら、もしかしてノエル達も酷い目に合わされていたのだろうか…そう考えると背筋が凍ってしまいそうだ。今は疲れた……このまま眠ってしまおう、ぐったりとコウに体を預けて眠ってしまう。
シフォンが到着した時、見つけたのは湖で探し回っているノエルだった。
突然、津波のようなのがやってきて、ルゥを連れ去ってしまったと説明された…何処へ行ったか分からない、そう思っていたが―― シフォンは場所が分かっていた。
さっき妖精が届けてきた草を燃やしたのは、怒り任せだけではなかった。あれ自体を粉にするのが目的――自分が得意な風を使い、粉を風に飛ばす……所謂、場所を特定するシフォンならではの発見器のようなもの。
己(おのれ)が一番強いと思ってる傲慢な男…自分だけなら兎も角、関係ない者も巻き込むと言うのなら、こちらだって考えがある……殺すのは簡単だ―― だからこそ、屈辱を植えつけてあげよう。
これは、普段は自分から他人へ手を出さないシフォンの怒りだった…
めったに怒らない人物の怒りは、恐ろしい事をこれから男は身を持って味わうだろう。
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