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「あの……」
「「………………?」」
いつの間に控えていたのか、続き間の方から小さな声がした。
「宮司さま、入ってもよろしいでしょうか」
「呪詛封じの護符は忘れてないでしょうね」
「はい」
「ならば良いのです。 お入りなさい」
スッと襖(ふすま)が開き、小さな影がしずしずと入ってきた。
この宮でただ一人の巫女服姿。
首からは赤い石で作った勾玉の首飾り。
ゆっくりと三つ指をついて頭を下げると、頭の後ろで束ねた銀色の髪がさやさやと床に流れ落ちた。
「「…………さ、咲良……」」
「お父様、お母様、お久しぶりでございます」
両親の前にチョコンと座ったのは、緋色の瞳をした双子の片割れの咲良だった。
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