「咲良さん、どうしましたか？ 貴方は贄送りの儀に合わせて潔斎しなければならいのに」 「「…………」」 贄送りという言葉に、両親がビクリとした。 双子の片割れである咲良は、忌み子としての役目がある。 鬼への生け贄となった咲耶が受けるだろう痛みや苦しみを一身に背負い、岩屋の中で死ぬ定めだ。 生まれ落ちてからずっと禁域の奥宮に封じられてきた咲良は、姉が負った怪我や病気、災厄の全てを引き受けてきたのだ。 災難を引き受ける度、咲良の肌には印が浮かぶ。 桜の花の形をした、黒い黒い痣(あざ)……。 ひとつ、ふたつと現れた痣は、今は数え切れないほどに増えている。 全ては、生け贄である咲耶を無事に成長させるためだけに……。 「その贄送りのことで、わたくしに考えがございます。 聞いていただけますか？」 「「…………………………？」」 咲良の提案は、両親を瞠目させるものであった。