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「宮司さま、私では代わりになれませぬか?」
「……またその話ですか。
…………貴方は贄姫の代わりの役目があるでしょう。
今まで引き受けた物も多い。
なのに、鬼にバリバリと食されても良い、と?」
咲良の顔の両サイドに垂らされた長い髪、その左の方を宮司はツイと後ろへ流す。
「「………………っ」」
両親は顔を背けた。
こめかみや頬、首筋へと連なる黒い桜の花。
白い肌に広がる禍々しい印に、背中に冷たい物が走る。
「まー、何処までお人好しなのですかね、この子は。
宮にずうっと封じられて、一部の者にしか存在を知られぬままで生きてきたのに?
性別の入れ替えを強制され、病気やら災難やらを押し付けられて、それでも理不尽っぷりをすっかりスルーで許すのですか。
贄姫の苦痛の全てを引き受けろと突き付けられても、ま~だそんな甘っちょろいことを。
大体、今まででかなりの命数を削られたというのに、淑やかさの欠片もないあの小生意気な娘の為に更に減らそうと言うのですか?
馬鹿ですか、この者達以上に輪をかけた永久馬鹿ですか貴方はっ」
「………………。
………………宮司さま、言い過ぎです。
お父様もお母様も困っているではありませぬか」
「困っているのではありません。
図星を突かれて絶句してるだけでしょう?」
チロリと宮司が視線を向けると、両親は更に縮こまってしまった。
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