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『こんなに気遣ってくださるなんて……。
花嫁にはなれないとお分かりになったら、どれ程お怒りになるのでしょう……。
いいえ、こんなに優しい振る舞いをなさる方だから、きっと許しておしまいになる。
でも……、でも、それではいけないのでは……』
幼子をあやすようにする鬼に申しわけなくて、引き返すよう頼んだ方が良いのではと思う。
『どうしよう……。
言わなければ………………』
躊躇いながらも打ち明けようとした瞬間、
ドッ!!
「……っ、あ……っ」
濃い空気の塊が薄い背中にぶつかった。
「……っ?おい、大丈夫かっ!?」
『言わなきゃ……いけ……ないのに……』
「おいっ、何があった!?」
一気に視界が暗くなり、咲良は意識を失った。
軽く揺さぶっても返事はなく、袿にくるまれたままでは確認できない。
くったりと凭れる体を抱き直し、鬼は迫りくる気流を一つ切り裂いた。
びううう!
逆巻く風が境界を抉じ開ける。
薄桃の色彩が二人を包み込み、清らかな水面の上に美しい球体を形成していく。
「おかえり、守弥(もりや)」
鬼の里へ辿り着いたのだった。
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