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一方、鬼は。 『…………参ったな……』 やはり、困惑気味であった。 『選定の泉の上を歩いて渡って来たということは、間違いなく対の証を立ててはいる……。 しかし、思っていたより小さい花嫁だな………………』 腕の中で一生懸命しがみつく咲良は、二、三歳は確実に幼い体格だ。 しかも、細い。 『確か……、ばあ様から聞いた話では、花嫁が食うに困らないだけの財力のある家が対になる筈だが……。 余程粗食だったのか、家業が傾きでもしたか? 肉付きも良くないし、随分軽い。 食うや食わずの生活だったとか……………いや………まさかな……』 控えていた両親は、栄養も足りていて普通だった。 余程の偏食家か、はたまた虐待行為を受けたかと疑えばきりがないが、対に定められた子供は早く親と別れねばならない分、周囲から溺愛されて育つ傾向にあるからそれも違う。 『何か事情があるかもしれないな。 こんなに縮こまってしまっているのも気になるが、先ずは栄養価の高いものでも食わせてみよう。 ばあ様なら、子供が好きそうな甘いものを見繕ってくれるだろうし。 それにしても、甘い匂いだな……』 毎日宮司にばけつぷりんを作っていた為に咲良にはプリンの香りが染み付いているのだが、鬼は知るよしもない。 紗ごしに背中をトントンとしてやると、すがり付くようにギュウッとしてくる。 その仕草すらも妙に幼く感じて、頭を軽く撫でた。

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