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「上がるぞ」
ドカドカと音がして、程なく守弥達がいる部屋の障子が開いた。
「兄さん、おかえり」
「あ、ああ……」
先に声をかけてきたのは弟の時雨だった。
後ろには、従兄の志朗と鷲志(しゅうじ)がいる。
「それがお前の花嫁か。
…………………………随分……小さい……な……」
守弥の背が高い事もあり、志朗には小柄な咲良が更に小柄に見えるのだろう。
「小さいが、間違いなく花嫁だ」
境界を越える際に見せた仕草を思い出し、抱き込んだ華奢な体の向きを少し直す。
「……眠ってるんだね」
「あ、ああ……。
狭間(はざま)を越える時に、気流の塊がぶつかったようでな……気絶してしまった……」
「そうなんだ……。大丈夫そう?」
「呼吸は落ち着いているから、多分……」
「そっか……」
「勿体ぶらずに早く見せろよ。
本家の嫁なら、かなりの美形なんだろ?」
「………………っ」
袿の襟を志朗がグイと引く。
「……………………?
……………おいおいおい……………こりゃ、随分不っ細工な嫁だなぁ、守弥」
「「…………………………」」
その場にいた全員が硬直した。
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