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がっくりと肩を落とした付喪神と式神たちは、桜の花びらで埋め尽くされた泉から離れ、咲良の部屋へほてほてと歩いてきた。 さっきのは夢で、いつもの笑顔の咲良がいるのではないかと思いながら。 からり。 襖を開けると、衣紋掛けにかけられた部屋着や文机がいつも通りの場所にあった。 愛用していた筆や硯も。 だが。 いつも通りの場所なのに、咲良だけがいない。 悲しくて何となく視線をずらすと、蒔絵が施された盆が目に入った。 「………………なんだ、これ……?」 その盆には、小さな包みが幾つも載せられている。 桜色の紗に包まれたものには、一つ一つ名前がつけられていた。 「雲外鏡さま……猫又さま……、俺たちの名前が書いてある!」 「本当だ!」 「咲良の字だぞ、これ!」 小さな包みは、宮の住人である付喪神や式神全てに漏れ無く用意されていた。

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