97 / 668
・
シャワーや追い焚きの仕方を教えつつ、守弥は咲良とともに風呂に入ることになった。
「お風呂に複数で入るのもですが、裸で入るのは初めてでございます」
シャワーの使い方を知らない事も衝撃だったが、咲良がポロリと漏らした言葉も衝撃だった。
「………そ、…そうか」
幼い頃から暮らしていた場所では、妄(みだ)りに肌を晒してはいけないと言い含められていたため、風呂に入るのも湯帷子(ゆかたびら)を着て入浴していたという。
「お風呂というのは、とても気持ちの良いものでございますね。
しゃわーも初めは驚きましたが、温かいお湯が出る如雨露のようでしたし。
こちらの世界は、便利なものがたくさんあるのですね」
「…………あ、ああ……」
長い髪を器用に纏めた姿は、どう見ても少女にしか見えない。
なんとも複雑な心境の守弥は、そっと視線を移す。
左半身に散る黒い痣が見えないような体勢をしているからか、余計に少女めいていて複雑な心境になる。
「親とも入ったことは……」
「ござりませぬ。
宮にいた櫛の付喪神とは入っておりましたけれど……」
「そうか……」
突っ込みどころは色々あるが、敢えて気づかない振りをすることにした。
ともだちにシェアしよう!