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「申し訳ございません。
やはり、わたくしの痣はご不快でござりましょう……」
「…………いや、それは別に……」
「災難を肩代わりした時の印ですから、見方によっては穢らわしいもの……。
封じの呪(まじな)いがかかってはおりますが、禍々しく見えてしまうのではと思うのです。
両親すら視線を逸らすくらいですから……」
自嘲気味に俯く咲良を、守弥はゆっくり膝に乗せた。
「大事な姉を守ろうとした印だ。
お前まで穢らわしいと思ってしまったら、その印の意味がなくなるだろう?
ばあ様が何も言わないと言うことは、穢れや禍いの象徴ではない。
最初は驚いたが、慣れてしまえばどうって事もない。
こちらの世界には腕や背中に刺青をしている者もいる位だからな。
あれに比べたら、お前のはささやかなものだ」
「………………あ、ありがとう……ござりまする……」
薄い背中をトントンとしてやると、咲良の顔がますます淡く染まった。
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