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のんびり風呂に浸かりながら、何とはなしにお互いの名前の話になった。 「なるほど……。 刺繍をご覧になったのですか……。 ″咲良″とお呼び頂いてると感じたのは、わたくしの気のせいではなかったのですね」 「…………分かるものなのか……?」 「ええ。 言葉には命が宿ります。 呼び方一つにしても、です。 昨夜とは違い、もりやさまから呼ばれる度に魂魄にまで響く感じがいたします」 「………そうか」 柔らかく微笑む様は少女のもの。 「もりやさまは?」 「………………?」 「もりやさまのお名前は、どう書かれるのでしょう……?」 「あ、ああ。 ウかんむりの守るに、弓と……」 小さな掌に書いていくと、咲良はほうと息をついた。 「…………守る、弥栄(いやさか)の弥……。 守り、益々家を盛り立てる………………なんて良いお名前なのでしょう」 「………………」 「守弥さま……」 「………………?」 心がざわつくようなそれでいて浮き立つような不思議な感覚を覚え、守弥は息を飲む。 「………言霊と守弥さまの魂魄が共鳴しておりまする。 守弥さま……ふふ……」 共鳴する音が聞こえるのだろう。 目を閉じて微笑む咲良の背中に、守弥は手をそっと添えた。

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