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昨日初めて会った筈なのに、腕の中のに咲良がいるのがしっくりくる。
……不思議なくらいに。
…シリン……
……しゃあん…… ……
「…………?」
「守弥さま」
……しゃあん……
「……咲良…これは…?」
……しゃりぃ……ん……
「守弥さまの響きは、清らかで……穏やかで落ち着きのある音……」
……しゃあ……ん………
「咲良の音は……」
しゃ……りぃ…………ん
「神事で使う鈴……、いや、…………星か雪が静かに降るような音がするな……。
とても綺麗だ」
「…………っ」
腕の中の咲良が恥ずかしそうに俯く。
「も、守弥さまの音は、初めてお聞きしますが……美しくて…………とても……とても落ち着きまする……。
それと…………、不思議なのですが、その………………耳に馴染んで、……懐かしいと感じまする」
「………………」
身代わり贄としてこの世界に来た咲良と、身代わりの花嫁を受け取った守弥。
なのに。
こうして傍にいることが自然なのだと思える。
「不思議だな……。
俺もそう感じている」
「…………わたくしも………です……」
お互いの声と共に響く鈴の音に聞き入りながら、懐かしさの理由を二人は探していた。
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