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「も、守弥さま……っ」」
目の縁にギリギリ留まっていた涙がほたほたと落ちる。
「……っ、……っ」
反射的に腕の中に抱き込むと、咲良は驚く程に冷えていた。
「こんなに冷えて……何があった」
「……分かりませぬ……でも…っ、でも……」
眦から落ちた涙が地面に落ちる。
その度に鈴のような音が響く。
「もう泣くな」
「はい……。
分かっているのに、涙が……止まりませぬ……っ、ふうぅ……」
尚も涙を零す咲良。
「どこか痛いか……?」
頭を撫でてやると、コクリと頷く。
「胸が……苦しゅうて……っ、……っ」
「何かぶつけたか……」
「いえ……っ、いえ…っ、何も……。
でも、……………きしきし軋んで……苦しくて……っ」
一際大きな涙が落とし、胸元を掴む。
「見せてみろ」
巫女服の袷(あわせ)を開く。
左胸に散る黒い痣に痛々しさを覚えながらも、原因になるものがないかを探す。
「何処が痛む?」
「……此処が、痛……っ」
「…………っ!」
しゃっくり混じりに示したのは、心臓だった。
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