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◆◇◆◇◆
しゃ……りぃん。
しゃぁあん……。
清らかな鈴の音がする。
「…………?」
しゃぁあん……。
辺りを見回すと、たくさんの紗(うすぎぬ)が風にそよいでいた。
真っ白なもの、緋色のもの、薄桃色のもの……。
重なった紗の中、心を過る焦燥に拳を握る。
今度こそ、失いたくないから。
微かな鈴の音のする場所にいるのだと、なぜか確信があって。
ふわりふわりとそよぐ紗を掻き分けていく。
その先にいるだろう人物をもとめて。
「…………ら……」
縺れる舌で名を紡ぐ。
「……り……ま…………」
「……っ!さ、く……ら!……咲良!」
もう一度見回し、声の在処を探す。
「咲良!」
ガバリと掻き分けたところに、小柄な影……。
今にも泣きそうな顔の咲良がいた。
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