135 / 668
・
守弥が完全に寝入ったあと、咲良がゆっくり起き上がった。
背中に回された腕に触れ、ほぅと息をつく。
『………漸く……、漸く……、お会いできた……』
咲良のものとは少し違う、少女の声。
『今度こそ、お返し……できまする……』
涙が一粒ほろりとこぼれ、守弥の胸元に落ちる。
しゃりぃん……っ。
清らかな鈴の音がし、微かに光を放って消えた。
『お預かりしたままで申し訳ありませぬ。
今度こそ、間違えませぬゆえ……』
ひとつ、またひとつ、こぼれた涙が守弥の胸元に落ちていく。
『………ら……、……か』
守弥のものとは少し違う声が応えた。
『…………っ、はい……っ。
もうすぐ……、全てお返しいたしますゆえ、もう少しおやすみくださいませ……』
『ああ……』
愛しげに守弥の髪を梳いてやり、咲良は再び眠りに落ちていった。
ともだちにシェアしよう!