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「いつもなら、殆ど覚えてはいないのですが……。 先程の夢は不思議なくらいはっきりと……」 「……そうか」 夢の中の出来事を、咲良は守弥に打ち明けた。 凍えて心細くなったところに守弥が来てくれたこと、着ていた服の中に包み込んでくれたことを。 「たしか、地面の上に立っていた筈ですのに、守弥さまのお顔が近いところに……。 それから……」 「他にも気になることはあるか?」 「はい。 わたくしの名前と韻は同じなのですが、別の名前が重なって聞こえました」 「…………?」 一生懸命思い出しているのだろう。 小首を傾げて一点を見つめている。 「ええと………………。 ……………………、…………………………うぅ……肝心な所が思い出せませぬ……」 「いずれ思い出すだろうから、気にするな。 夢の中で痛かったところは、もう大丈夫か?」 「…………少し……痛みまする……」 「そうか……」 「…………っ」 守弥がそっと手を心臓の上に添える。 咲良も一瞬身を強張らせたが、触れられることが嫌ではなく……寧ろ当然のように思えて力を抜いた。 お互い不思議なくらいに自然で。 何となくほわほわした気持ちのまま、二人は再び眠りに落ちていった。

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