134 / 668
・
「いつもなら、殆ど覚えてはいないのですが……。
先程の夢は不思議なくらいはっきりと……」
「……そうか」
夢の中の出来事を、咲良は守弥に打ち明けた。
凍えて心細くなったところに守弥が来てくれたこと、着ていた服の中に包み込んでくれたことを。
「たしか、地面の上に立っていた筈ですのに、守弥さまのお顔が近いところに……。
それから……」
「他にも気になることはあるか?」
「はい。
わたくしの名前と韻は同じなのですが、別の名前が重なって聞こえました」
「…………?」
一生懸命思い出しているのだろう。
小首を傾げて一点を見つめている。
「ええと………………。
……………………、…………………………うぅ……肝心な所が思い出せませぬ……」
「いずれ思い出すだろうから、気にするな。
夢の中で痛かったところは、もう大丈夫か?」
「…………少し……痛みまする……」
「そうか……」
「…………っ」
守弥がそっと手を心臓の上に添える。
咲良も一瞬身を強張らせたが、触れられることが嫌ではなく……寧ろ当然のように思えて力を抜いた。
お互い不思議なくらいに自然で。
何となくほわほわした気持ちのまま、二人は再び眠りに落ちていった。
ともだちにシェアしよう!