133 / 668
・
微かに睫毛に涙の粒がある。
そうっと指で拭うと、びくん!と華奢な体が跳ねた。
「…………?……」
守弥と同じように夢の中で堕ちる感覚になったのか、咲良も四肢を強張らせてから眼を開けた。
「…………?……?」
自分から見える範囲を見回し、傍らに守弥を見つけてほぅっと息を吐く。
「済まない。起こしてしまったな……」
「いえ……、大丈夫……です。
不思議な夢を見ていて、急に引き戻されましたゆえ……」
「不思議な夢?」
「はい。
沢山の紗がはためく森のような場所にいる夢でございました」
「…………っ!?」
まさか。
同じ夢を見ていた……?
「紗の森?
どんな夢だったんだ?」
「はい……。
とても美しい紗がフワリフワリと。
でも、凍てつくような寒い場所でして……」
「…………」
「寒くて寒くて心細くて……。
しかも、心の臓のあたりがキリキリ痛くて怖くなったところに、守弥さまが……」
「………………」
やはり、同じ夢をみていたようだ。
ともだちにシェアしよう!