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『ちょっとちょっとちょっと、兄さん、どうよ!? 成長してるのはいいけど、咲良が兄さんみたいになっちゃったらどうすんの!』 『どうって言われてもな……』 隣の部屋にいる咲良に聞こえないように、声は自然に小さくなる。 『あのビジュアルなら、ほぼ美少女的なイメージでしょ。 華奢でさ、可愛くて儚げでさ。 なのに、少しゴツくてほぼ無表情な可愛さの欠片もないおっさんになりたいだなんて』 『おっさん言うな……』 まだ23歳でおっさん呼ばわりされた守弥だが、合気道や弓道をしているのもあって、上半身は程好く筋肉のついた逆三角形だ。 『花嫁として来たのに、花婿が二人になっちゃうでしょ。 どうすんの?どっちが上になるのさ』 『………………?』 『完全にではないにせよ、ガチムチの男夫婦ってどう考えても無理があるよ。 男の娘(こ)的なビジュアルキープじゃなきゃ、皆卒倒しちゃうってば!』 『おい…………』 『今の抱き心地がいいんだよ!? 余計な筋肉なんかがついちゃったら、ゴツゴツして楽しくないでしょ! ふわふわ甘い香りがしてて、抱っこした時に丁度いいサイズの咲良!そうじゃなきゃダメなんだってば! ゴリラみたいな成長なんて勘弁してよ! ゴツくて脛毛や胸毛生えてるなんてやだ!! なんとか説得して、お願いだから説得して!考えなおすようにしてやってよ!』 『ま、待て、俺は脛毛はあるが胸毛は……っ』 『やめてやめてやめて~!おっさんはやだーっ!』 だばだば涙を流しながら両肩を掴んでガシガシ揺さぶってくる時雨に、守弥はもはや答えるどころではない。

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