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延髄を叩こうとするのを制止し、懐紙を取り出した咲良が守弥の鼻を摘まんだ。
「らいじょうぶら、このくらい」
「いけませぬ。
延髄を叩いても逆効果になりまする。
少しの間、堪えてくださりませ」
「う″…………、ら、らいじょう……」
「いけませぬ。
ある程度収まるまでは、じっとしていただかねば」
「………………」
昨日の事もあり、たしなめるように見詰められるとどうにも逆らえない。
鼻を摘ままれたまま、守弥は大人しくする。
そんな二人を見て、ばあ様と祖母がひそひそ話に花を咲かせた。
「甲斐甲斐しくお世話する白兎と、悄々と手当てを受ける狼みたいねぇ……」
「やっぱり、そう見えるかい?」
「ええ」
「ぽにーてーるじゃなくて、ついんにしたらどうかねぇ」
「…………楽しそうですわね」
「「ふっ、ふっ、ふ……」」
目を見合わせた二人の行動は早かった。
それぞれブラシとヘアゴムを手に取り、咲良の両脇に陣取る。
「咲良ちゃん、ちょっとじっとしててね」
「ばらんすが大事だからねぇ……」
「え?あ?はわわ!?」
右手に氷嚢、左手に懐紙の咲良はなすがままだ。
ほどかれたポニーテールは、あっという間に可愛らしいツインテールになった。
「やっぱり」
「ツインテールが似合うわね」
「「ふっ、ふっ、ふ……」」
「ふぐあっ!」
どぶぁっ!
「ひああああ!守弥さま!」
止まりかけていた鼻血が、再び噴き出した。
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