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「……?」 ばあ様は、微かな鳴動を感じてポケットに手を入れる。 携帯電話に、メールが着信していた。 送信元は先程二人を診察した荊櫻である。 『大ばば。 傍にあの二人がいるなら少し離れて読んでくれ』 「………………」 指示に従い、2メートルほど距離を取る。 『守弥の火傷は、間違いなく完治しているから安心してくれ。 ただ、核の抜けた部分……、輪郭ともいえる部分を大ばばはどう見ているんだ? かなりの年月を経て薄くなっているが、かなり濃い呪いか瘴気に魂魄が染まった痕跡を感じたぞ』 「…………」 『それと、咲良の中には起源の娘がいる。 ……あまり好ましいやり方ではないが、起源の男にかけられた呪いを纏めてひっこ抜く最中に、不測の事態があったのかもしれない。 守弥の起源になった男の核を取り込み、引き受けた災厄と瘴気をぶつけて相殺してきた。 かなりの年月をかけて、な』 「…………」 2000年近くかかる相殺……。 それだけの年月を経てもなお、浄化しきれない闇とは……。 『起源の男自身が生み出したものか、はたまた誰かがかけたのかは分からないが、かなりの憎悪だと思う。 色んなものが絡み付いた闇の塊だった筈だ。 多分、魘魅(えんみ)というよりは蠱毒(こどく)に近い』 「…………」 心臓にヒヤリとしたものを感じて、ばあ様は息を飲んだ。

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