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漸く涙が止まり、ざわついていた気持ちが落ち着いた。 「咲耶を思い出したのか?」 「……はい」 「顔立ちは双子だから似ているだろうしな……」 「いえ……。 わたくし達は二卵性の双子でございます。 咲耶の方が涼しげな目元をしておりました」 「そうか……」 気遣う守弥に頷き、咲良が目元を拭う。 たしかに、一卵性で男女の双子は生まれない。 もし一卵性であれば、どちらかに……。 「意地っ張りなところがございましたが、気持ちの優しい子なのです。 わたくしが早とちりしなければ、今ごろ守弥さまにとって善き伴侶になっていたのだろうと……」 俯く咲良の頭を撫でながら、ばあ様はそうっと息をつく。 『いいや、守弥の姫はさくらで間違いない……。 魂魄の核を抱えていたことも、守弥の火傷を肩代わりしたことも、全部繋がっている……。 まだ全貌は分からないけど、さくらは来るべくしてこの世界へ来た……。 そうとしか思えないねぇ……』 偶然ではなく、必然。 咲良の中に潜む少女の声が告げていたではないか。 「最期の機会だ」と。

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