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「どうだい?背が伸びた自分の姿は」
「………………」
「全然気持ち悪くないでしょう?」
「……………………………………」
確かに、気持ち悪くはない。
鏡の向こうの自分に、奇妙な既視感を覚えて。
「……………………」
何となく、腑に落ちた。
『咲耶……』
二卵性の双子だから、完全にそっくりという訳ではない。
だが。
「おばあ様、髪をほどいても宜しいでしょうか……」
「ん?構わないよ」
「ありがとうございまする……」
ヘアゴムを外すと、さやさやと鳴りながら銀髪が流れ落ちる。
結い跡すらない艶やかな流れ。
鏡の向こうの姿を、髪と瞳の色彩を漆黒に置き換えていく。
自信のなさが表れた目元を涼やかなものに置き換え、唇を引き結んでみる。
「……………………さくや……」
「…………?」
「咲耶……っ」
無意識のうちに、ほろほろと涙がこぼれる。
意志が強くて明るくて、誰からも好かれていた。
何でもないと言いながらも、宮の式神や作喪神が怖くて震えていた。
外を知らない自分に、四季折々の変化を教えてくれた。
大好きな咲耶を、鏡の向こうに見た……。
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