237 / 668

「どうだい?背が伸びた自分の姿は」 「………………」 「全然気持ち悪くないでしょう?」 「……………………………………」 確かに、気持ち悪くはない。 鏡の向こうの自分に、奇妙な既視感を覚えて。 「……………………」 何となく、腑に落ちた。 『咲耶……』 二卵性の双子だから、完全にそっくりという訳ではない。 だが。 「おばあ様、髪をほどいても宜しいでしょうか……」 「ん?構わないよ」 「ありがとうございまする……」 ヘアゴムを外すと、さやさやと鳴りながら銀髪が流れ落ちる。 結い跡すらない艶やかな流れ。 鏡の向こうの姿を、髪と瞳の色彩を漆黒に置き換えていく。 自信のなさが表れた目元を涼やかなものに置き換え、唇を引き結んでみる。 「……………………さくや……」 「…………?」 「咲耶……っ」 無意識のうちに、ほろほろと涙がこぼれる。 意志が強くて明るくて、誰からも好かれていた。 何でもないと言いながらも、宮の式神や作喪神が怖くて震えていた。 外を知らない自分に、四季折々の変化を教えてくれた。 大好きな咲耶を、鏡の向こうに見た……。

ともだちにシェアしよう!