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今までで一番、お互いの顔が近くにある。 思わぬ事が起きて、お互い目を見開いたままだ。 「「………………」」 触れた唇がもたらしたものは、衝撃と、驚き。 そして。 ピリリと駆け抜けた雷(いかずち)にも似た、甘い痺れ……。 「す、すまん」 「い、いえ……っ」 触れていたのは、一瞬なのか……数分なのかすら分からない。 だが、決して不快なものではなく。 寧ろ、永い間待ちわびていたような不思議な感覚で……。 「…………っ」 離れた瞬間、咲良は胸を引き裂かれたような気がした。 「…………咲良?」 守弥も同じような感覚を覚え、戸惑う咲良の顔を見る。 付き合った相手は何人かいるが、軽く唇が触れただけで電流が走り抜けたり、こんなに心が動かされた事はない。 昨日は咲良を家族の一人と言い聞かせたが、とうにそんな存在を越えてしまっていた。 違うと誤魔化そうとしても、誤魔化し切れないくらいに。 戸惑いの表情の咲良と視線が絡まる。 「男同士で、……嫌だったか?」 「い、いえ……っ、嫌ではありませぬ……っ」 「そうか……?」 「んぅ……」 チュ……、チュッ。 試すように軽く触れ、唇がもう一度重ねられた。 ビクリと震えた華奢な体。 重ねた唇に拒否反応はない。 「…………っ」 だが。 少しずつ咲良の背中が強張っていく。 「…………?」 「う…………っ、ふ……」 「…………?」 目を開けると、眉根を寄せて苦しそうな表情がある。 「大丈夫か?咲良!?」 「ぷは……っ、けふっ、けふっけふっ、……は、はう……、けふっ」 慌てて唇を離すと、半ば酸欠状態の咲良が咳き込んだ。

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