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「大丈夫か、咲良?」
薄い背中を擦り呼吸を助けると、潤んだ瞳で見上げてきた。
「は、はい……、けふっ、けふっ」
唇を重ねている間、ずっと息を止めていたのだろう。
呼吸が落ち着くのを守弥は待つ。
「そうか……、初めてだったか」
「は、はい……」
ずっと幼い姿のままでいた。
限られた者としか接触できずに育ち、漸く年ごろの姿になった咲良。
こういった場面に出くわした事もないだろう。
「守弥さまは……」
「ん?」
「守弥さまは……苦しくないのですか……?」
「ああ」
「守弥さまは、大人だからでございますか……?」
「いや、その、な……。
息をしてるから、大丈夫なんだ」
「……?
どうやって息を?」
「………………鼻で、な」
「……っ?鼻でございますか……?」
「ああ」
「…………」
口づけの最中に鼻で呼吸をするなど、思いもしなかったのだろう。
驚きを隠せないでいる咲良に、守弥もついつい笑みが零れる。
「疑問が解けたが、どうだ?」
「………………?」
「続きをするか……?」
「……………………っ、……………………は、………………………………………………はぃ……っ」
返事をしたあと、蒸気が噴き出すほどに羞紅した咲良に、守弥はそうっと口づけを落とした。
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