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室内に響くのは、唇が重なる音。 微かな吐息。 鼻に抜ける声。 衣擦れの音。 それから。 咲良の髪が肩から落ちる音……。 なんとも甘い光景を開けっぱなしのドアの向こうで目撃していたのは、時雨と末弟の総詞。 風呂上がりの守弥が慌てて部屋に駆け込んだのを見て、何かアクシデントが起こったのかと様子を伺いに来て、この現場に遭遇したのだ。 『う、うしゃこ……っ! かわ、かわっ!』 『はいはい。 気持ちは分かるけど、乱入するのは駄目だよ~』 『蕩けそうな顔……っ、可愛い……っ! うしゃこぉ~っ!』 『うんうん。 可愛いよねぇ。でも、お邪魔は駄目だよ~』 『やだやだ、オレもうしゃこにチューするぅ!』 『はいはい、我慢我慢』 『うしゃこ……っ、ぐは!』 鼻血を噴きかけてる弟を担いで静かに扉を閉めた時雨は、然り気無く人払いの術を掛けて立ち去った。 翌日、色香駄々漏れの咲良を見て、守弥と時雨以外のきょうだい全員が鼻血を噴いたことを追記しておこう……。

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