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燠火

……一ヶ月後。 夏の大祭の準備に大わらわの本宮に咲良はいた。 「さくら~っ」 「うしゃこ~っ!」 「おわり?練習もうない?」 「うさこ、抱っこ抱っこ~!ギュウッてするの!」 神楽舞いの練習を終えて一息つくと、守弥の弟妹たちがパタパタと走り寄ってきた。 「ふふ……っ。 稚児舞いの練習は終わりましたか? まだ半分もいってないと、時雨さまが困っておりましたよ」 「え、う、うん!おわった!」 「そだよ、おわった!」 誤魔化すようにギュウギュウと抱きつく四人。 「確か今日は衣裳をつけての練習だったはず……。 お片付けも終わりましたか?」 「「………………」」 「脱ぎっぱなしで置くと、汗臭くなりまする。 わたくしもお手伝いいたしますゆえ、ちゃんと衣紋掛けにかけましょうね……?」 「片付けどころか、練習もしてないねぇ」 「「………………っ!!」」 廊下から聞こえた時雨の声に、ギクッと身を固くする四人。 「舞いが頭に入ってないままで、明日ぶっつけ本番する気かな? 間合いも覚えてないなら、舞台に出るのも不安でしょ?」 「だって……」 「稚児舞い、楽しくないもん」 「ヒップホップの方がいい!」 「ヒップホップの稚児舞いなんかしたら、氏子のじいちゃん達がひっくり返っちゃうよ~?」 「袴、やだ!」 「ばさばさして動きづらいもん!」 「やだやだ!」 「はかまキライ!」 ……なるほど。 衣裳が動きづらいのと、音楽が退屈だから嫌な訳だ。 「では、わたくしもご一緒いたしまする。 それなら大丈夫でございますか?」 「「!!!!!!」」 にっこり微笑むと、四人の瞳が煌めいた。

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