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「ここ、…………ここで裾をさばくのです」 「こう?」 「ええ。上手ですね」 「うさこ、ここ、わかんないよう~っ!」 「右手をこう……、ここで足を踏み出すのです」 「むずかしいよぅ……」 「大丈夫。ちゃんと出来てらっしゃいます」 「ホント?ホントに!?」 「ええ」 退屈に聞こえる音楽のひとつひとつに意味があること、どこで衣裳をさばけばいいのかを聞き、四人は真面目に取り組みはじめた。 「この2週間、手こずりまくったのが嘘みたいだねぇ……」 教えかたはそんなに違わない……筈だ。 なのに四人の真剣さが全然違う。 いや、真剣というより…………楽しそうなのだ。 ………………物凄く。 「そりゃ、あの見事な舞いを見たら真剣にもなるだろうな」 「やっぱり、それかぁ……」 そう。 なかなかやる気がでない四人の前で、咲良が稚児舞いを披露したのだ。 宮に住まう付喪神と一緒にノリノリで。 元々所作の美しさが桁外れの咲良が舞ったのだ。 見事としか言いようがなかった。 四人だけではなく、時雨も守弥もばあ様も目を奪われたほどに……。 「通しで出来たら、一緒にする?」 「はい」 「上手に出来たら、ホントに?」 「ええ。もちろん」 「「………………?」」 話の読めない守弥と時雨の前で、四人が配置につく。 始めから終わりまで通しで舞い、ひとつも間違える事なく四人は舞い終えた。 「うさこ、全部できたよ!」 「間違えなかったよ!」 「すごい!?スゴい!?」 「約束だよ、約束!」 「ええ。もちろんです」 「「やったぁ!」」 通しで出来たご褒美は、咲良と一緒のヒップホップであった。

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