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「………………?」 ぷりんを本殿に届けたものの、咲良の姿がなかなか見えないことを心配した守弥は。 厨房までの戻り道、お菓子を手にした付喪神が渋滞しているのを見て一瞬戸惑う。 「何があったかは後で聞くから、まずは本殿に届けてくれるか?」 「お、おう」 「りょーかい」 きゃわきゃわ、きゅわきゅわとささめき、立ち往生していた付喪神たちが本殿に向かっていく。 「ちゃんと言ってやんな」 「色男は辛いねぇ」 「肝心なことを言わねぇとな」 「嫁は可愛がるもんだで」 「…………?」 すれ違いざまに小さな声で言い置いていく付喪神に戸惑いつつ、踏み潰さないように注意深く進むと、床にへたりこむ時雨とボロ泣きの咲良がいた。 「話が見えないが、取り敢えず立て……」 「あ、あ……うん」 がっくりと脱力した時雨が立つ。 「どうした? 何か辛いことがあったのか?」 「いえ……、なんでもありませぬ……」 「何でもないのに、ボロボロ泣くか……?」 「あー……、咲良は悪くないんだよ。 俺の質問の仕方が良くなかっただけ。 後でゆっくり話すから、お菓子を持ってこ、ね?」 「…………?」 付喪神の列の最後尾について本殿に向かうが、微妙な空気が漂う。 ひくん、けくんと泣きしゃっくりしながら歩く咲良の頭を撫でると、大粒の涙がたばばっと落ちた。

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