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「………………っ、ん……」 ちゅっ。 「…………………………はぅ」 ちゅっ。 ちゅっ。 詰めていた呼吸が戻り、額やこめかみに唇が触れる。 「わた……くし……」 「ちゃんと達けたな、いい子だ」 「……っ」 今更ながらに、顔が熱くなる。 守弥にはしたない姿を見せてしまったと。 「…………っ、……ぁ、…………?」 恥ずかしさに狼狽え、触れた胸元。 不思議な感触に驚く。 「ああ、待て、軽く拭くから」 「……これ、は…………」 「俺のだ。すまん」 「守弥さまの…………熱?」 「ああ」 目を細め、額にひとつ口づけを落とし、タオルを取ろうと守弥の視線が逸れた。 『守弥さまの熱……。 大好きな、守弥さまの……』 自然に手が動く。 指先に付いた蜜。 ……ちゅっ。 「不思議な香り……不思議な……味……」 「………………っ」 舌で転がすように蜜の味を確かめる。 きっと、これから少しずつ知らないことを教えて貰えるはず……。 守弥の為だけの自分に、変わっていける……。 「…………ふふ……」 平素では見ることのない妖艶さを醸し出す咲良に、守弥はコクリと喉を鳴らした。

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