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食器を洗い、片付けが終わった。 歯磨きを終えた咲良が板の間にちょこんと座る。 「おばあ様、皆様、本日は誠にありがとうございました」 「うんうん。 今日は疲れただろうし、ゆっくりおやすみ」 「は、はい…っ」 「晩になってから冷えて来てるし、今日は内湯の方がいいかもだねぇ」 「は、はい…っ」 夜になると山の空気は一気に冷える。 露天風呂もいいが、緊張の一日を過ごした咲良には内湯の方がいい。 ばあ様はニコニコしながら咲良の頭を撫でる。 「緊張しなくて大丈夫だよ。 全部守弥に任せておけば、なぁんてことないからね」 「……っ、は、はい…。 おやすみなさいませ」 三つ指をついて頭を下げる。 仕草の一つ一つが優美なのは変わらない。 「うんうん。 ゆっくりおやすみ」 「はい…っ」 だんだん守弥との時間に近づいているからか、幾分緊張しているのが分かる。 立ち上がったあと守弥に手を引かれて歩き出すが、ギコギコと音がしそうなくらいにぎこちない。 「………ん?」 「え、えう…」 「そういうのも好ましいからな」 「……っ、……え、あ、あわわ…」 ごくごく自然に抱き上げられて、咲良の顔が真っ赤になる。 「わたくし…自分で歩けますのに…」 「いいから、いいから」 「でも…」 「俺がこうしたいんだ。 大人しく連行されてくれ」 「………っ、……ぇぅぅ…」 咲良を抱き上げたままでスタスタと守弥が廊下を曲がっていく。 「………やっぱ守弥だな」 「うんうん」 「上手に尻に敷かれにいってる」 「あとは守弥に任せて大丈夫だな」 「うんうん」 無事に婚礼を済ませた二人。 あとは守弥が何とかするだろう。 「お供え持ってくべ」 「んだんだ」 「咲良がこさえたお菓子もたんと持ってこ」 「うんうん」 「お神酒もたんと持って行くべよ」 「んだんだ」 「うんうん」 「大ばばはどうする?」 「んん…? さすがにこの年だと酒は堪えるねえ…。 今日のデータを持って外宮に行くよ」 「………一升瓶三本あけても素面でいられるのに?」 「それは言わない約束だよ。ふっふっふ…」 式神と付喪神達は本殿へ。 ばあ様は空間を繋いで外宮へ向かう。 気配に敏い咲良が動揺せぬように…。

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