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からの、同室者
ゲームをしようとコントローラーを持った瞬間だったか、どうやら俺は寝落ちをしていたらしい。
ふ、と目を開けるとテレビの画面の明かりだけで目が痛くなる。窓に顔を向ければ平三といた時よりもさらに暗くなっていた。
「あぁ……やべ、」
中断してある画面は平三のためにシフォンケーキを作ろうと止めたままの画面。この場に座ったその瞬時に眠ったのか?
疲れてもないのになぜ寝た俺。……でもいいか。
次に時計代わりであるスマホを確認しようと立ち上がる時、なにか違和感が足元にあった。――ん?となって顔を下に向ける。が、やっぱり暗くて見えない。けど、なんだ?
なんか、盛り上がってる?
よくわからないせいか、足踏みをしてみる。
「なんか……固い?」
だけど柔らかい……床とは違う感覚にさらに強く足を動かしてみる。すると次の瞬間――、
「ん、ぁ……」
背筋が凍った、ような気がする。どこからか……いや確実に下から、床から聞こえたおかしな声。
急に怖くなって足を床らしきものからソファーに持ちあげて、そしてソファーの上に立ち上がった。暗いせいか余計に怖い。テレビ画面の明るさだけだからか恐怖心霊より怖い。
こういった怖さは見る側なら全然平気でも実際に体験する側になると話が違う。
そんな恐怖に押しつぶされそうになった俺の心臓をよそに体は急いで電気を点けようとソファーからおりてパチッと鳴らす。
点いた瞬間の擬音はまさに、パッと。
「あ、明るいっ……!」
「……は?」
誰かがいた。
おそらく、おかしな声の持ち主だろう相手。
俺はそいつを知っていた――王司 雅也 。
王司 雅也とはこの学校、それは高校だけでなく中学生の奴等も大学生の奴等もみんな知っている相手。
どっかの御曹司だったか、海外生まれ日本育ちだったか、裏組織の息子だったか……すごく曖昧な感じだが、平三なみに……いやそれ以上に校内では有名な男が、俺の部屋にいた。
「おっと、ここでは初めましてになるかな?」
「……」
床に寝転がっていた王司 雅也。あの王司が床に……。
余談だが、ファンクラブだったか親衛隊だったか、そんななかじゃ王司 雅也を“王子様”と呼んでいた気がするけど……今、床に寝てたな?
「……」
「中沢君?いや、智志君?」
それなのに王司は俺の名前を知っていた。
確かに同じ学年ではあるが、とんだマンモス校であるここは俺の学年だけで9組もある。二学年だけで9組だ。一学年なんか11組というファンタジーが起きてるんだぞ。
それなのに、こんな平々凡々。浮いた存在がまだ続いてるとはいえ、王司からすれば俺は蟻か……もしくは空気だ。とりあえず目につかないような存在であるはずの俺の名を、こいつはなぜか知っていた。
なぜだ。つーか、なぜこの部屋にいるんだ……。
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