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それでも相手は女、の子

  「お兄ちゃんは似合わないわよ、あの二人とは」 「……」  ……え、なにこれ俺に言ってんの?  毎度お馴染み会話パターン。  平三希望の〝なにか作って〟  木下希望の〝本屋行こうぜ〟  俺希望の〝そのまま帰ろう〟  だいたいがこんな感じだ。  そして今日の放課後は、木下の希望を叶えてやるために本屋へ向かった。  ここら辺の大きな本屋はメジャーなものからマイナーなものまで揃ってるいい店だ。ジャンルごとに階がわかれている八階建て。  木下に誘われなければ俺はこんな大きな本屋を知れず、もう少し学校から近い建物内の一階フロアにある本屋しか行かなかっただろうな。  木下はもちろん漫画を、ボーイズラブ漫画を買いに来てるわけだから迷わず五階へ足が進む。俺も平三もとくに買う物がなかったから黙ってついて行っていたが、俺はそこで見つけた。  お菓子作りの新しいレシピ本を。  買おうかどうしようかと数秒迷った結果、とりあえず確認がてら立ち読みしようと思い二人へ伝える。それに続いて『じゃあ俺もあそこ行くわ』と口にした平三は二階を指差した。  ここ、もう四階だぞ?  はやく言えばいいものの。  一旦、解散することにした。  みんなが好きな場で買ったり買わなかったりしたあと出入り口の端に集合。  そう決めた木下ははやくも五階へ上がるためにエスカレーターに乗って行ってしまったのだ。頷いた俺と平三も一言交わして別れれば俺はそのお菓子作りの本を手にする。  そこで、唐突に言われた言葉。  全く面識などない、小さな女、の子に。 「……えーっと?」 「だから、お兄ちゃんにはあの二人と一緒にいるのが似合わないわ、と言っているの」  開いていた本を持ちながら視線を横にずらしてみるものの、相手の身長が足りてないせいでさらに視線を下にやれば、可愛らしい女の子が絵本を持っている。  しかし彼女の口から出た言葉はあまりにも理解出来なさ過ぎて、俺に言ったのかもわからなかった。 「あー……俺?」 「そうよ、他に誰がいるの?」  結構な強気発言に周りを見てみるが、お兄ちゃんという呼び名に当てはまる人がいない。  あとはまばらに女性がいたり、たまにおじさんがいたり……女の子が指して言う言葉は俺しかいなかった。  それにしてもどういうことだ……。なんだっけ、あの二人と似合わない?  単純に考えてあの二人って、今さっきまで一緒にいた平三と木下の事か? 「……え、君はその歳でもう顔面格差社会だと気付いているのか……?」 「どう見てもお兄ちゃんの顔、あの二人と比べたら変だもん」 「ゴッホっ、ゲホッ……!」  子供って、ストレート過ぎる。 「え、っと……そー、だな……」 「わかっているのに一緒にいるの?」 「や、まぁ……」  咳き込んだせいか喉がまだ痛い。  それと、わかりきってる事なのに改めて言われると心に来るものがある。  尖がった棒がグサッと、つーか……相手が相手だから余計に刺さったというか。  本当になんなんだこの子。何歳なんだ……今の子供って怖ぇな……。 「……どうしてそんな絶望ですって顔をするの?」  すごく純粋な目で俺を見続ける女の子は容赦ない。  君のせいでお兄ちゃんはこんな顔になってるんだよ……なんて――子供相手に俺も傷付いてたら、あんな学校で生活出来るかっつの。  

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