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第1話『ルナティック』

 第一章 ──────『ルナティック』  灯りを消した部屋で、ベッドの軋む音が響く。  古いモーテルの小さな窓にかかるカーテンの、その薄い生地を通過して、満月の明るい光がアンバーの雄々しい姿を浮かび上がらせていた。  美しい黒の毛並みが青白い光に包まれて、艶々と煌めく。  その毛先が肌に触れるだけで、アンジュの体温は止め処なく上昇した。 「あっ、あぁっ……イく……!」  ベッドに腰掛けたアンバーの膝の上で身体を揺すられながら、アンジュは何度目かの絶頂を迎えていた。  背中をしならせ、仰け反り晒した白い喉に、アンバーの熱くて長い舌がねっとりと這わされた。 「あ……っ、んぅ……ん」  たった今、爆ぜたばかりの白濁が、触れ合っているアンバーの漆黒の獣毛を濡らしているのに、また腹の奥がキュンと疼く。  ズルリ……と、アンバーの熱が身体から出ていく感触にさえ快楽を拾い、後孔の奥から熱く濡れた愛液が滲み出し、溢れた。 「あ……、嫌……もっ……」  ──もっと……  と、つい声に出してしまいそうになる。  そして、記憶の奥から父の言葉が蘇る──『卑しいΩ性からは逃れられない』  こんな自分は嫌だ。  こんな浅ましい言葉を吐きたくない。  そう思っているのに、初めて経験するヒートの最中には、その激しい欲情を抑えることなど出来はしない。 「アンバー、もっと……もっと欲しい。もっとして……」  一旦は飲み込んだ言葉が、口をついて出てしまう。  何度も達しているのに、全身を巡る血液が沸騰しているみたいに熱い。  腹の奥が切なく疼き、後孔からまた溢れた愛液が、内股を伝い濡らした  まだ全然足りない。何かが足りないのだ。  アンジュは、アンバーの身体の中心で猛り立つものの前に蹲り、舌を伸ばした。 「──アンジュ……っ」  少し焦ったような声が、頭の上から落ちてきても構わずに、それを舐め上げる。  熱くて大きくて硬い。こんなの全部口に入りきらない。  そう頭では思っても、アンジュは必死に小さな口を開け、アンバーの屹立を咥え込む。  口の中がアンバーの肉棒でいっぱいになり、喉の奥を突く。 「……っ」  アンバーの熱い吐息が落ちて、アンジュの細いプラチナブロンドを揺らした。と、同時に、もうこれ以上は無いくらいに大きかったはずのアンバーの猛りが、咥内で更に大きく膨らんだ。 「──っ、ふ……ぅ……っう」  息苦しさに喘ぐような声が、唇の端から漏れてしまう。

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